薬を飲んでも血圧が下がらない|薬を増やす前に疑う2つの病気

When Blood Pressure Won’t Come Down

薬を飲んでも血圧が下がらない|薬を増やす前に疑う2つの病気

4種類目を足す前に、確かめる順番があります

診察室で腕帯を巻いて、また上が158。薬は3種類、飲み忘れもほとんどない。それなのに数字が動かず、次の受診でまた1種類増える。薬を飲んでも血圧が下がらないという状況は、外来ではめずらしいものではありません。日本高血圧学会のガイドラインをもとにした国内の総説では、3種類の降圧薬を使ってもコントロールが不十分な人は、降圧薬で治療を受けている人の1割以上にのぼると報告されています。

ただ、ここで「効かない体質なのだ」と名前をつけてしまうのは早すぎます。診療では、4種類目を足す前に外していく順番があり、その順番を踏んだ先に、頻度の高い2つの病気が姿を現します。眠っているあいだの呼吸の問題と、副腎から出るホルモンの問題です。

治療抵抗性高血圧とは

国内の総説では、利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を、それぞれ十分な量で使っても目標の血圧まで下がらない状態を治療抵抗性高血圧と定義しています。ポイントは「3種類」という数だけではなく、そのなかに利尿薬が入っていること、そしてそれぞれが十分な量であることです。この2つが欠けていれば、まだ治療抵抗性とは呼びません。

2025年、日本高血圧学会は6年ぶりの改訂版として「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発表しました。高血圧の診断基準は診察室140/90mmHg以上・家庭135/85mmHg以上で据え置かれた一方、降圧目標は年齢や持病によらず診察室130/80mmHg未満・家庭125/75mmHg未満に一本化されました。従来は75歳以上などで140/90mmHg未満とされていたものが、そろえられた形です。

つまり、ゴールの線そのものが手前から奥へ動きました。同じ血圧でも「目標に届いていない」と判定される人は構造的に増えます。この改訂の背景として、目標に達していないのに治療内容を見直さないまま様子を見てしまう状態(クリニカルイナーシャ)が、以前から問題として指摘されてきたことも挙げられています。

治療抵抗性高血圧は「重症だから覚悟してください」という宣告ではなく、原因をもう一度洗い直す合図として使われる言葉です。実際、この言葉が付いた時点で優先されるのは薬を増やすことではなく、次に述べる確認作業のほうです。

見かけの抵抗性を先に外す

本当は目標に達しているのに、外来での測定値だけが高く出ている状態を「偽抵抗性(見かけの抵抗性)」と呼びます。国内の総説では、治療抵抗性高血圧を疑ったときに最初に外すべき項目として位置づけられています。

測り方と白衣現象

外来に慌てて駆け込んですぐ測る、上腕の太さに対して小さすぎる腕帯で測る。どちらも実際より高い値を出します。腕帯は幅が上腕まわりの4割ほど、長さは上腕まわりの8割以上を巻けるものが目安とされています。さらに、診察室でだけ血圧が上がる白衣現象は高血圧の人の2〜3割にみられるとされ、家庭血圧や24時間の記録を取ると見分けがつきます。

飲み忘れは責める話ではない

服薬の抜けも見かけの抵抗性の大きな原因です。国内の総説では、はじめて高血圧を指摘された人の約4割が1年以内に治療を中断すると紹介されています。対策として挙げられているのは意志の問題ではなく、処方を簡略にする、配合剤で錠数を減らす、生活に合う時間帯に変えるといった調整です。

血圧を上げている薬や食品

飲んでいるもの全体の棚卸しも欠かせません。非ステロイド性抗炎症薬(いわゆる痛み止め)は、腎臓でのプロスタグランジン産生を抑えて水とナトリウムをためるため、収縮期血圧を平均5mmHg前後押し上げることが示されています。ほかにステロイド、経口避妊薬、シクロスポリン、エリスロポエチン、交感神経を刺激する作用のある薬なども血圧を上げます。

見落とされやすいのが甘草(カンゾウ)です。含まれるグリチルリチンがコルチゾールの分解を妨げ、水とナトリウムをためてカリウムを下げます。漢方薬や胃腸薬、肝臓の薬だけでなく、加工食品にも入っていることがあるため、市販品まで含めて確認する必要があります。

先に外す項目 確かめ方
測定条件座って1〜2分休んでから測る/腕帯のサイズが上腕に合っているか
白衣現象家庭血圧の記録、または24時間の血圧記録と突き合わせる
服薬の抜け実際の飲み忘れ回数を申告する/錠数と回数を減らせないか相談する
併用薬・食品他院分・市販薬・漢方薬・のど飴まで含めてお薬手帳で確認する
食塩と体重味付けの実際、間食や外食の頻度、直近の体重の動き

食塩の影響は小さくありません。治療抵抗性高血圧の人を対象に、食塩を厳しく減らす期間と多くとる期間をくじ引きで入れ替えて比べた小規模な試験(12人)では、減らした期間に血圧が大きく下がりました。参加者が12人と少なく、期間も各1週間という限界のある研究ですが、減塩が「効果の弱い付け足し」ではないことは示しています。ガイドライン2025の減塩目標は1日6g未満です。

「もっと強い薬を足すしかない」という誤解

血圧が下がらないと聞くと、より強い薬に切り替える、もう1種類足す、という発想になりがちです。しかし実際に問題になるのは、強さよりも組み合わせの抜けであることが多いのです。

ガイドライン2025が示した降圧薬のステップでは、3剤併用へ進む場面で「サイアザイド系利尿薬が投与されていなければ追加を検討する」と明記されています。利尿薬とβ遮断薬については、本来使われるべき病態での使用率が低く、もっと積極的に使ってよいという指摘も添えられました。つまり、増やす前に「入っているべきものが入っているか」を見る設計になっています。

「何を足すか」で差が出ることを示したのが、英国で行われた二重盲検のクロスオーバー試験(PATHWAY-2)です。3剤でも下がらない人に4種類目として何を足すかを比べたところ、スピロノラクトン(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)はプラセボと比べて家庭の収縮期血圧を約8.7mmHg下げ、ビソプロロールより約4.5mmHg、ドキサゾシンより約4.0mmHg大きく下げました。

この結果は「誰でもスピロノラクトンを足せばよい」という意味ではありません。対象は治療抵抗性高血圧として集められた人たちで、腎機能が低下している場合はカリウムが上がる副作用に注意が必要です。ガイドライン2025でもこの系統の薬は、病態に応じて選ぶ位置づけに整理されています。

むしろ注目したいのは、最もよく効いた薬がアルドステロンというホルモンの働きを抑える薬だったという点です。この試験を行った研究者らは、下がりにくい高血圧の背景に体液のたまりとアルドステロンが関わっていることを示す結果だと解釈しています。この解釈が正しいとすれば、次に挙げる2つの病気に話がつながっていきます。

いびきと血圧はどうつながるのか

眠っているあいだに気道がふさがって呼吸が止まると、そのたびに血液中の酸素が下がり、体は目覚めようとして交感神経を高ぶらせます。これが一晩に何十回も繰り返されると、本来なら夜間に下がるはずの血圧が下がらず(夜間に下がらないタイプ)、朝になっても高いまま、という流れが起こります。国内の総説でも、睡眠時無呼吸症候群では夜間も血圧が高いタイプを示すことが多く、いびきと日中の眠気が診断の手がかりになると整理されています。

下がりにくい高血圧でどれくらい多いのか

2001年に発表された横断研究では、大学の高血圧専門外来に通う薬が効きにくい高血圧の41人のうち83%に睡眠時無呼吸が見つかりました。男性では96%、女性では65%で、男性のほうが多く、程度も重い傾向でした。

この83%をそのまま自分に当てはめることはできません。対象は大学の専門外来に紹介されてきた41人で、平均の体格は大きく(BMIの平均は34)、平均3.6種類の降圧薬を飲んでいた集団です。選ばれた集団のなかでの割合であり、高血圧の人全体の数字でも、日本人の数字でもありません。

より広く集めた検討としては、2023年に発表された系統的レビュー・メタ解析があります。7つの研究・約2,500人をまとめたもので、睡眠時無呼吸がある人はない人に比べ、治療抵抗性高血圧がみられる可能性が約3〜4倍高いという関連が示されました。ただし含まれた研究の多くは観察研究で、どちらが先に起きたのかという因果の向きまでは決められません。研究数が7件と少なく、血圧計の違いなど調整しきれていない要素があることも、論文自身が限界として挙げています。

治療すれば薬が要らなくなるのか

治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸の両方がある194人を対象に、スペインの24施設で行われた無作為化試験では、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を使った群のほうが24時間の平均血圧が約3mmHg低く、拡張期血圧も下がりました。ただし収縮期血圧については、はっきりした差にはなりませんでした。夜間に血圧が下がるリズムを取り戻した人の割合は、CPAP群のほうが多いという結果でした。

国内の総説も「CPAPのみで血圧が正常化することは少ない」と述べています。つまり睡眠時無呼吸の治療は、降圧薬の代わりではなく、治療の土台にひとつ加わるものです。減量と減塩も同時に重要とされています。

次のような点があれば、診察で伝える価値があります。大きないびき、呼吸が止まっていると指摘された、息が詰まって目が覚める、夜間に何度もトイレに起きる、朝の頭痛や口の渇き、日中の強い眠気、そして朝や夜間の血圧が特に高いこと。太っている人に多い一方で、肥満でない人も少なくないことは国内の総説でも指摘されています。なお、睡眠の検査もホルモンの検査と同じく、症状と経過から診療上必要と判断した場合に限って行うものです。検査だけを目的とした受診は保険の対象になりません。詳しくは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状と睡眠時無呼吸症候群(SAS)のページにまとめています。

原発性アルドステロン症を疑うとき

原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが自律的に出過ぎる病気です。このホルモンはナトリウムと水を体にため、代わりにカリウムを尿へ捨てる働きをします。結果として血圧が上がり、人によっては血液中のカリウムが低くなります。

頻度は、日本内分泌学会の診療ガイドライン2021によると、かかりつけ医の施設で高血圧の人の3〜12%、専門施設では5〜29%と幅があります。2026年に発表された総説では、特に選ばれていない高血圧の集団で5〜15%、治療抵抗性高血圧の集団では約20%と整理されています。集める場所によって数字が動くこと自体が、この病気の見つかりにくさを表しています。

スクリーニングが勧められている人

日本内分泌学会のガイドラインは、高血圧の人全般で調べることが望ましいとしつつ、費用対効果が確立していないため、この病気が多い群で積極的に調べるという立場をとっています。挙げられているのは次のような条件です。

  • 利尿薬を飲んでいるかどうかにかかわらず、血液のカリウムが低い
  • 治療抵抗性高血圧(利尿薬を含む3種類以上でも目標に届かない)
  • 40歳より前に高血圧を発症した
  • 治療を始める前の血圧が150/100mmHg以上だった
  • 副腎に腫瘍が見つかっている
  • 若いうちに脳卒中を起こした
  • 睡眠時無呼吸症候群を合併している

ここで誤解されやすいのが、カリウムが正常なら違う、という思い込みです。同ガイドラインの解説でも、特徴的な症状や所見を欠く例は少なくないとされており、カリウムが正常な人もいます。低カリウムは強い手がかりですが、必須条件ではありません。

見つける価値と、その先の治療

この病気を探す理由は、血圧の数字だけではありません。年齢・性別・血圧をそろえた本態性高血圧と比べて、脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全、蛋白尿の頻度が高いことが報告されています。原因に応じた治療の選択肢があることも大きく、片側の副腎だけが原因と確認できれば手術が選ばれ、両側性の場合や手術をしない場合はMR拮抗薬による薬物治療が第一選択とされています。

調べ方は、血液中のアルドステロンとレニンを測ってその比を見るところから始まります。ただし飲んでいる降圧薬の種類によって値が動くため、判定の前に薬の調整が必要になることがあります。どこまで調べるかは、経過と所見をうかがったうえで診療上必要と判断した場合に限って進めます。検査だけを目的とした受診は保険の対象外です。二次性高血圧の全体像は二次性高血圧の原因と検査にまとめています。

2つの病気が重なりやすい理由

睡眠時無呼吸と原発性アルドステロン症は、別々の話に見えて重なりやすいことが知られています。日本内分泌学会のガイドラインでも、原発性アルドステロン症の人は本態性高血圧の人に比べて肥満・耐糖能異常・睡眠時無呼吸症候群の合併が多いと記載されています。

2026年に発表された総説は、その仕組みの仮説として体液の移動を挙げています。アルドステロンが過剰だとナトリウムと水がたまって体液量が増え、横になったときに脚にたまっていた水分が首のほうへ移動して、のどの周りの組織を圧迫し、気道がつぶれやすくなるという説明です。

逆向きの数字もあります。同じ総説では、睡眠時無呼吸の人を調べると原発性アルドステロン症が8.9%に見つかった一方、ほかに調べる理由がない人だけに絞ると1.5%まで下がったと紹介されています。いびきがあるという理由だけで全員に検査が要るわけではない、ということです。

これらは総説がまとめた仮説と観察結果であり、因果関係が確定したわけではありません。それでも、いびきの話と血液のカリウムの話を別々の引き出しに入れないほうがよい、という実務上の意味はあります。

明日から準備できること

家庭血圧を「判断に使える形」で記録する

診察室の1回の値だけでは、白衣現象も夜間の高さも見分けられません。記録の条件をそろえるだけで、情報の価値が変わります。

  • 朝:起床後1時間以内、トイレを済ませたあと、薬を飲む前・朝食の前に測る
  • 夜:就寝前に測る
  • 背もたれのある椅子に座って1〜2分休んでから、腕帯は心臓の高さに合わせる
  • 上腕式の血圧計を使い、朝晩それぞれ2回測って両方とも記録する(低いほうだけ残さない)
  • 受診前の1〜2週間分をそのまま持参する

目標は家庭血圧125/75mmHg未満、高血圧と判断する基準は135/85mmHg以上です。測り方の詳細は家庭血圧の正しい測り方にまとめています。

薬を見直す材料をそろえる

  • お薬手帳を、他院の処方も含めて持参する
  • 市販の痛み止め・胃腸薬・漢方薬・サプリメント・のど飴まで書き出す(甘草は市販品に入っていることがあります)
  • いま飲んでいる薬に利尿薬が入っているかを確認しておく
  • 飲み忘れの実際の頻度を、正直に伝えられるよう思い出しておく

薬の種類ごとの位置づけは高血圧の薬の種類・選び方に、治療全体の流れは高血圧の治療・血圧管理にまとめています。

受診で相談するタイミング

  • 利尿薬を含む3種類以上を飲んでいて、家庭血圧が目標に届かない
  • 大きないびき、呼吸が止まると指摘された、日中の強い眠気、夜間に何度もトイレに起きる
  • 血液検査でカリウムが低いと言われたことがある
  • 40歳より前に高血圧を指摘された
  • 朝や夜間の血圧が特に高い
  • 痛み止めや甘草を含む薬・食品を続けてとっている
  • これまで効いていた薬が急に効かなくなった

血圧が高いまま放置するのも、自己判断で降圧薬を減らしたり中止したりするのも危険です。数字が動かないときこそ、勝手に調整せずそのまま持ち込んでください。どこまで調べるかは、症状と経過をうかがったうえで診療上必要と判断した範囲で決めていきます。

よくある質問|血圧が下がらないとき

Q. 血圧が下がらないのは、薬が合っていないからですか?

合っていない可能性もありますが、順番として先に確かめることがあります。測るときの姿勢や腕帯のサイズ、診察室でだけ上がる白衣現象、飲み忘れ、痛み止めや甘草を含む薬の影響、食塩のとりすぎです。これらを外しても利尿薬を含む3種類以上で目標に届かないとき、はじめて治療抵抗性高血圧として原因を調べていきます。

Q. いびきを治せば、血圧の薬はやめられますか?

一般に薬の代わりにはなりません。治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸の両方がある194人を対象にした無作為化試験では、CPAPを使った群で24時間の平均血圧が約3mmHg低くなりましたが、下がり方は平均としてわずかでした。国内の総説でもCPAPのみで血圧が正常化することは少ないとされています。自己判断で降圧薬をやめないでください。

Q. カリウムが正常なら、原発性アルドステロン症は除外できますか?

除外できません。低カリウム血症は強い手がかりですが、日本内分泌学会のガイドラインでは特徴的な症状や所見を欠く例も少なくないとされ、カリウムが正常な人もいます。40歳より前の発症、治療前の血圧が150/100mmHg以上だった、副腎に腫瘍が見つかっている、睡眠時無呼吸を合併しているといった条件も、調べる理由になります。

主な参考資料
日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(改訂点の解説:日大医誌 2025年)/日本内科学会雑誌 104巻2号・104巻3号(二次性高血圧と治療抵抗性高血圧)/日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021」/Logan AG ら(J Hypertens 2001年・横断研究)/睡眠時無呼吸と治療抵抗性高血圧のメタ解析(Frontiers in Medicine 2023年)/HIPARCO(JAMA 2013年)/PATHWAY-2(Lancet 2015年)/Pimenta E ら 食塩制限試験(Hypertension 2009年)/原発性アルドステロン症と睡眠時無呼吸の総説(Frontiers in Endocrinology 2026年)

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