Antihypertensive Medications — How to Choose
降圧薬の種類と選び方
ARB・Ca拮抗薬・利尿薬の違いを医師が解説
なぜ同じ高血圧でも処方される薬が異なるのか。薬の種類ごとの特徴・使い分けをわかりやすく解説します。
「なぜ同じ高血圧なのに、隣の人とは違う薬を出されるの?」——診察でそう思ったことはないでしょうか。降圧薬には複数の種類があり、年齢・合併症・生活習慣によって選ぶ薬が変わります。今回は主要な降圧薬の特徴をわかりやすく整理します。
降圧薬の主要な4系統
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH2019)では、以下の4系統が第一選択薬とされています。
血管を広げて血圧を下げる。降圧効果が確実で副作用が少なく、最もよく使われる系統。高齢者・狭心症・脳卒中後に特に向く。副作用としてむくみ・動悸・顔のほてりが出ることがある。
血管を収縮させるホルモン(アンジオテンシンII)をブロックする。腎臓保護効果があり、慢性腎臓病・糖尿病性腎症を合併する方に特に向く。空咳の副作用が少ない(ACE阻害薬と異なる点)。
ARBと同じ系統の前段階をブロックする。心不全・心筋梗塞後に特に有効なエビデンスがある。日本人では空咳の副作用(約10〜20%)が出やすいため、ARBが選ばれることが多い。
余分な塩分・水分を尿として排出して血圧を下げる。単独では降圧効果が控えめだが、他の薬と組み合わせると効果が高まる(併用療法の定番)。高齢者の骨折予防効果も報告されている。低カリウム血症・尿酸値上昇に注意。
合併症別の使い分け(ガイドライン準拠)
| 合併症・状況 | 推奨される薬の系統 |
|---|---|
| 慢性腎臓病・糖尿病性腎症(タンパク尿あり) | ARB または ACE阻害薬 |
| 狭心症・冠動脈疾患 | Ca拮抗薬 または β遮断薬 |
| 心不全・心筋梗塞後 | ACE阻害薬 または ARB+β遮断薬 |
| 脳卒中後 | Ca拮抗薬 または ARB |
| 高齢者・単純な高血圧 | Ca拮抗薬(第一選択) |
| 痛風・高尿酸血症あり | サイアザイド利尿薬は避ける。ARB(特にロサルタン)は尿酸値を下げる作用あり |
1剤で下がらない場合:併用療法
ガイドラインでは、1種類で目標値(家庭血圧 135/85 mmHg未満)に届かない場合は、作用機序の異なる薬を組み合わせることを推奨しています。
最も使われる組み合わせ:
- Ca拮抗薬 + ARB(または ACE阻害薬)
- 上記 + サイアザイド系利尿薬(3剤目)
配合剤(2成分を1錠にまとめた薬)も多く、飲み忘れが少なくなるメリットがあります。
副作用が気になる・効いていない気がする・費用を抑えたい、などの理由で薬を見直したい場合は、自己中断せず必ず医師に相談してください。ジェネリックへの変更で費用を大幅に下げられることもあります。
医師のひとこと
「アムロジピンが効かない」「咳が出る」「足がむくむ」——薬の相性は個人差が大きく、最初の1種類でピタリと合うとは限りません。副作用が気になったらすぐに教えてください。薬の切り替えや増量タイミングは血圧の推移を見ながら決めますので、家庭血圧の記録を持参していただけると助かります。
当院の高血圧診療ページもあわせてご覧ください
よくある質問
Q. ARBとACE阻害薬はどう違いますか?
どちらもアンジオテンシン系を抑えて血圧を下げますが、作用点が異なります。日本人ではACE阻害薬で空咳が出やすい(10〜20%)ため、ARBが選ばれることが多いです。腎臓保護効果はどちらも期待できます。
Q. 降圧薬は一度飲み始めたらやめられませんか?
減塩・運動・体重減少で血圧が目標値まで下がった場合、医師の判断のもとで薬を減らしたりやめたりできることがあります。ただし自己判断での中断は血圧が急上昇するリスクがあるため、必ず医師に相談してください。
Q. 痛風があります。利尿薬は飲んでも大丈夫ですか?
サイアザイド系利尿薬は尿酸値を上昇させるため、痛風・高尿酸血症がある方には原則として避けます。ARBの一種であるロサルタンは尿酸を下げる作用があり、高血圧と高尿酸血症を合併している方に選ばれることがあります。

