③血液検査による診断
血液検査を行い、テストステロン(遊離型テストステロン)、PSA(前立腺がんマーカー)はもちろん、肝機能や腎機能など数字が高い方は治療が受けられませんので多数の項目での測定を行います。遊離型テストステロンは年齢とともに基準となる値が異なりますが、8.5 pg/ml未満が男性更年期障害(LOH)と診断する1つの基準となります。(うつ病などの精神疾患が原因でも男性ホルモン値は低下することがあるため、「遊離テストステロンが低値=男性更年期障害」とはなりません)
男性ホルモンであるテストステロン(より正確には、遊離型テストステロン)の量は、年齢と共に少なくなります。下の表の通り、テストステロンは20歳代でピークとなってから減少を続け、70歳代では20歳代の約半分になってしまいます。
テストステロンの減少するスピードが速いと男性更年期障害になりやすい、とも言われていますが、まだ研究段階で定かではありません。
遊離型テストステロンの量には個人差があり、年齢だけで多い・少ないの判断はできないため、血液検査が必須です。また、遊離型テストステロンの量は必ずしも男性更年期障害の症状と相関しないとされており、遊離型テストステロンの数値が低くても更年期症状が全くない中高年男性もおられます。
男性更年期障害の発症にストレスも大きな要因となっています。更年期障害で困っている男性は40~50歳代の、まさに働き盛りの年代が多く、ストレスの原因は仕事や人間関係が多いようです。また、定年を迎えてから男性更年期障害を発症する方も少なくありません。それまでは、仕事人間として存分に活躍していたような方で、定年してからは自分を活かせる場所を失ったり、生きがいがなくなったりすることが要因です。
睡眠不足や偏った食事(特に外食やコンビニ弁当が多い方)、運動不足なども結果的にテストステロンの分泌を減少させ男性更年期障害が発症しやすくなります。
頻度としては多くありませんが、特に精神科領域の薬や一部の胃薬などが原因で、テストステロンの量が下がることがあります。このような場合は、それらの薬剤の変更・中止することにより改善が見られます。
女性の更年期障害と同様に、「何となく体調が優れない」「疲れやすい」というあいまいな訴えが多く、「何だかよくわからない」不調こそが、更年期障害の特徴とも言えます。
● ほてり、のぼせ、冷え、動悸 、発汗、口内乾燥、便秘、下痢、食欲不振
● 頭痛、めまい、耳鳴り、呼吸困難
● しびれ、知覚が鈍い
● 肩こり、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感
● 頻尿、尿の勢いの低下、股の不快感、ED、性欲低下、勃起力低下など
● 集中力低下、決断力の低下、不安、パニック
● イライラ
● うつ、無気力、おっくう
● 不眠(寝付きが悪い、中途覚醒)、夕方急に眠たくなる
● うつ病、不安神経症、パニック症、統合失調症などの精神疾患
● 睡眠時無呼吸症候群
● 糖尿病
● 甲状腺機能低下症、橋本病、甲状腺機能亢進症、バセドウ病
男性更年期障害(LOH症候群)の診療は、以下の流れで行います。
LOH症候群は、様々な症状として現れていることが多く、単一の症状のみで男性更年期障害と診断することは困難です。そのため、まず現在の症状群を把握するために、世界中で広く用いられているHeinemannらによるAging males’ symptoms=AMSスコアという問診票を用います。
男性更年期障害(LOH症候群)の症状は、うつ病や不安神経症、パニック症などの精神疾患と似た症状が多くあります。不調の原因が男性更年期なのか精神疾患なのかを区別しなければ正しい治療は行えません。また、そのような精神疾患のある方が男性ホルモン補充療法を受けることによって症状が悪化することもあります。当院に心療内科(精神科)の医師はおりませんので、症状によっては当院で男性ホルモンの検査を行い、結果が出るまでの間に専門医の受診が必要になることが多いです(紹介状を作成します)。専門医の受診後、おおよそ6~7割の方がうつ病、不安神経症、パニック症などの疾患と診断されています。
血液検査を行い、テストステロン(遊離型テストステロン)、PSA(前立腺がんマーカー)はもちろん、肝機能や腎機能など数字が高い方は治療が受けられませんので多数の項目での測定を行います。遊離型テストステロンは年齢とともに基準となる値が異なりますが、8.5 pg/ml未満が男性更年期障害(LOH)と診断する1つの基準となります。(うつ病などの精神疾患が原因でも男性ホルモン値は低下することがあるため、「遊離テストステロンが低値=男性更年期障害」とはなりません)
ホルモン補充療法とは、不足しているテストステロン(男性ホルモン)を増加させるために、直接テストステロンを注射する治療法です。男性更年期障害(LOH症候群)と診断された40歳以上の男性でテストステロン補充療法が、第一選択肢になります。 (うつ病などの精神疾患をお持ちの方がテストステロン補充療法を受けるとその精神疾患が悪化することがあるため、精神疾患の除外が必須です)
一般的には3~4週間おきに筋肉注射を行い、症状の改善があるかどうかをみながら治療します。 注射する間隔は個人差があるため、注射の効果が切れてきた、と思った時に打つことをおすすめします。
注射以外に、内服や軟膏などがあるようですが、内服は副作用で肝機能障害が非常に多く、軟膏は効果が不安定で、そもそも認可されたものがない、などの理由であまり一般的ではありません。
● 前立腺がん、男性乳がん、前立腺肥大症
● 治療前のPSAが2.0 ng/ml以上
● うつ病、不安神経症、パニック症など精神疾患
● 多血症
● 重度の肝機能障害
● 重度の腎機能不全
● うっ血性心不全
● 重度の高血圧
● 子どもをつくりたい方
直接的に男性ホルモンを補充する治療とは異なり、各症状を緩和するのが目的となります。使用する薬剤としては、漢方薬や、ED薬など様々です。
ホルモン補充療法による副作用には、脂質代謝異常、多血症、体液貯留、前立腺肥大症、前立腺がん、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群、女性化乳房、ざ瘡(にきび)、体毛の増加、精巣萎縮、不妊、行動・気分の変化、などが挙げられます。この中で頻度が高いのは、多血症・肝機能障害などです。 このような副作用を監視するために当院では、定期的に血液検査を行うことをお勧めしています。
血液検査(遊離テストステロン、PSA、その他必要に応じた項目)
精神疾患の除外
その他の疾患の除外
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