SGLT2 INHIBITORS — COMPARED
SGLT2阻害薬はどれがいい?
フォシーガ・ジャディアンス・カナグルを内科医が比較
3種類はどれも「尿から糖を出して痩せる薬」ですが、心臓・腎臓への効果やリスクに違いがあります
・3剤の体重を減らす効果はほぼ同等(半年〜1年で平均2〜4kg)
・ジャディアンスは心臓病で亡くなるリスクを減らすデータが最初に出た薬
・カナグルは腎臓保護データが強いが、骨折・下肢切断リスクが他の2剤より高い
・フォシーガは1型糖尿病にも使える唯一のSGLT2阻害薬(日本)
「フォシーガとジャディアンスの違いはわかった。でもカナグルって何が違うの?」という質問を受けることがあります。この記事では3剤を並べて比較します。フォシーガとジャディアンスの詳しい直接比較はこちらの記事もご参照ください。
3剤の基本情報をまとめて比較
| 項目 | フォシーガ | ジャディアンス | カナグル |
|---|---|---|---|
| 一般名 | ダパグリフロジン | エンパグリフロジン | カナグリフロジン |
| 製造元 | アストラゼネカ | ベーリンガー/リリー | 田辺三菱/J&J |
| 用量(日本) | 5mg・10mg | 10mg・25mg | 100mg |
| 体重減少(6〜12ヶ月) | 約−2〜2.5kg | 約−2.5〜3kg | 約−2.5〜3.5kg |
| 日本での適応 | 2型糖尿病・1型糖尿病・心不全・CKD | 2型糖尿病・心不全 | 2型糖尿病のみ |
| 主な心血管アウトカム試験 | DECLARE-TIMI 58 | EMPA-REG OUTCOME | CANVAS |
心臓への効果:ジャディアンスが最も強いエビデンス
心臓と血管を守る効果は3剤で差があります。
ジャディアンスは2015年のEMPA-REG OUTCOME試験で、心血管疾患のある2型糖尿病患者において、心血管死亡リスクを38%、入院を伴う心不全を35%減少させることが示されました。SGLT2阻害薬として最初に「心臓を守るデータ」を出した薬であり、心不全のある方に特に多く使われます。
フォシーガのDECLARE-TIMI 58試験では、心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントに差はなかったものの、心不全による入院を17%減少させました。心不全・慢性腎臓病(CKD)に対する日本の保険適用もあり、適応の広さが特徴です。
カナグルのCANVAS試験では心血管イベント全体では有意に減少しましたが、後述の骨折・下肢切断リスクの問題も同じ試験で明らかになりました。
腎臓への効果:カナグルのCREDENCEは画期的だが
3剤とも腎臓を守る作用があることが確認されていますが、最も強いエビデンスを持つのはカナグルです。
2019年のCREDENCE試験では、糖尿病性腎臓病のある患者において、カナグリフロジンが腎不全・死亡などの複合エンドポイントを30%減少させました。これはSGLT2阻害薬で初めて腎臓病専門の試験で証明された結果です。
フォシーガも2020年のDAPAーCKD試験で、糖尿病のないCKD患者にも腎保護効果があることを確認(複合エンドポイント39%減)。現在では非糖尿病のCKDに保険適用があります。
カナグルの注意点:骨折と下肢切断リスク
重要カナグルに特有のリスク
- 骨折リスク:CANVAS試験でカナグルは骨折リスクが1.26倍(特に前腕・足・上腕)。フォシーガ・ジャディアンスでは同様のリスクは確認されていません。
- 下肢切断リスク:CANVAS試験でカナグルは下肢切断(主に足趾・中足骨)が約2倍に増加(1000人年あたり6.3 vs 3.4件)。末梢動脈疾患のある方では特に注意が必要です。
このため、医療ダイエット目的での処方においては、骨粗しょう症のある方・末梢動脈疾患のある方・下肢に問題のある方にはカナグルは選択しにくい薬です。純粋な体重管理目的ではフォシーガまたはジャディアンスが選ばれることがほとんどです。
SGLT2阻害薬に共通の副作用
3剤に共通する副作用もあります。
- 尿路・性器感染症(カンジダ):糖を尿から出すため菌が繁殖しやすい。女性に多く、陰部のかゆみ・おりもの増加として現れます。
- 頻尿・脱水:尿量が増えます。夏場・高齢者・利尿剤と併用している方は特に注意。
- 低血糖:SGLT2阻害薬単独では起こりにくいですが、インスリンやSU薬と組み合わせると低血糖リスクがあります。
- ケトアシドーシス:まれですが重篤。過度の糖質制限中・手術前後・重症感染症中は使用を中断します。
どれを選ぶか:持病・目的別の目安
| 状況 | 向いている薬 | 理由 |
|---|---|---|
| 心不全もある2型糖尿病 | ジャディアンス | 心血管死亡減少の強いエビデンス |
| 慢性腎臓病(CKD)がある | フォシーガ(非糖尿病でも) | 非糖尿病CKDへの保険適用あり |
| 1型糖尿病もある | フォシーガ | 日本唯一の1型糖尿病適応 |
| 骨粗しょう症・下肢動脈疾患あり | フォシーガまたはジャディアンス | カナグルは骨折・切断リスクに注意 |
| 医療ダイエット目的(内科的管理) | フォシーガまたはジャディアンス | 体重効果は同等。カナグルは適応外リスクあり |
医師のひとこと
SGLT2阻害薬はどれも「同じ仕組み」の薬ですが、試験のデザインや適応、副作用プロファイルに差があります。「体重を落としたい」というだけなら3剤の効果はほぼ同等ですが、糖尿病・心不全・CKDを合併している場合や、骨粗しょう症・下肢の問題がある場合は、持病に合わせた選択が重要です。
当院でSGLT2阻害薬を処方する場合は、血液検査で腎機能を確認したうえで最適な薬を選択しています。「どれが向いているか診てほしい」という方は、お気軽にご相談ください。
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