男性糖尿病患者の心臓病リスクはホルモンで変わる

Sex Hormones & Diabetes Heart Risk

男性糖尿病患者の心臓病リスクはホルモンで変わる

テストステロンが高いほどリスクは低く、肥満で増えるエストラジオールが逆にリスクを高める――大規模研究から見えてきた意外な関係。

2型糖尿病の男性は、なぜ心臓病リスクが高いのか

2型糖尿病(血糖値が慢性的に高くなる病気)の男性は、糖尿病のない人に比べて心臓病(心筋梗塞・心不全など)を起こすリスクがおよそ2〜3倍高いとされています。

その主な原因は、高血糖が長年続くことで血管が傷み、動脈硬化(血管が硬くなり詰まりやすくなる状態)が進むためです。ただ近年の研究から、「従来の危険因子」だけでは説明しきれない差があることがわかってきました。その鍵のひとつが、性ホルモン(テストステロンとエストラジオール)です。

大規模研究が示した「ホルモンと心臓」の新事実

2026年、ジョンズ・ホプキンス大学を中心とした研究チームが、2型糖尿病で過体重・肥満の男女2,260人を対象にした大規模研究(Look Ahead試験)のデータを解析し、Diabetes Care誌に発表しました(PMID: 41582527)。

主な結果(男性のみ)

・テストステロン(男性ホルモン)が高い男性ほど、心臓病を起こすリスクが有意に低かった。

・エストラジオール(女性ホルモンの一種)が1年後に増加した男性は、心臓病リスクが上昇した。

・女性では、性ホルモンと心臓病リスクの間に有意な関連は見られなかった。

つまり「男性に限って」、ホルモンバランスが心臓病リスクに深く関わっているということです。

なぜ肥満でテストステロンが下がり、エストラジオールが増えるのか

男性の体内では、テストステロン(主に精巣で作られる)が脂肪組織にある「アロマターゼ」という酵素の働きによってエストラジオールに変換されます。内臓脂肪が多いほどこの変換が進むため、テストステロンが減少し、エストラジオールが増加するという「ホルモンの逆転」が起きやすくなります。

エストラジオールとは何か

エストラジオールは一般に「女性ホルモン(エストロゲンの一種)」として知られていますが、男性の体内にも少量存在し、骨や心血管の健康維持に関わっています。しかし、肥満などで過剰に増えると、男性では心臓病リスクの上昇につながる可能性が指摘されています。

男性更年期(LOH症候群)との関係

加齢とともにテストステロンが低下する状態を「LOH症候群(男性遅発性性腺機能低下症)」または「男性更年期」と呼びます。倦怠感・気力低下・性欲減退などが主な症状です。糖尿病・肥満はLOH症候群を悪化させる要因でもあり、今回の研究はその関係が心臓病リスクにまで影響する可能性を示唆しています。

テストステロンを測るべきか――実践的な視点

現時点では「糖尿病患者全員にテストステロン測定を」という基準はありません。ただ、以下のような方は測定を検討する意義があると考えます。

  • 肥満を伴う2型糖尿病の男性
  • LOH症候群(男性更年期)の症状がある方
  • 心臓病リスクが高く、従来の管理だけでは改善が得られていない方

糖尿病患者の心臓病を予防するために、まず大切なこと

ホルモンの話は興味深いですが、心臓病予防の基本は変わりません。

  • 血糖コントロール:HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖の指標)を適切な範囲に保つ
  • 血圧管理:適切な目標値を主治医と相談する
  • 脂質管理:LDLコレステロール(悪玉)を下げる
  • 体重管理:内臓脂肪を減らすことがテストステロン改善にも直結
  • 禁煙:心臓病リスクを大きく下げる

担当医より

「血糖・血圧・コレステロールをしっかり管理しているのに、なんとなく体の調子が戻らない」という男性糖尿病の方に、ホルモン検査をお勧めすることがあります。テストステロン低下はそれ自体が治療対象になることもありますし、生活習慣の改善で自然に回復することもあります。気になることがあればお気軽にご相談ください。

糖尿病・男性ホルモン検査のご相談|札幌

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