GLP-1 Receptor Agonists & Muscle Preservation
GLP-1薬で筋肉も落ちる?
最新研究でわかったこととこれからの治療
体重を落とすだけでなく「筋肉を守りながら脂肪を落とす」時代へ
マンジャロやウゴービをはじめとするGLP-1薬は、肥満治療に大きな変化をもたらしました。しかし2026年に発表された最新の研究論評が、見逃せない課題を指摘しています。「体重が落ちればOK」ではなく、「何が落ちているか」こそが重要というのです。
GLP-1薬で落ちる体重の25〜40%は「筋肉」だった
米国・欧州の複数の医療機関による共同論文(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌、2026年)は、GLP-1薬で体重が落ちるとき、その25〜40%は脂肪ではなく筋肉(除脂肪体重)の減少であることを示しました。バリアトリック手術(肥満手術)でも同様に20〜30%が筋肉の喪失だったと報告されています。
除脂肪体重とは?
筋肉・骨・内臓など、脂肪以外の体重のこと。筋肉量がその中心を占めます。体重計の数字が同じでも、筋肉が多い人ほど健康的な体組成とされています。
なぜ筋肉が落ちると問題なのか
筋肉はじっとしていても多くのエネルギーを消費します。筋肉が減ると基礎代謝が下がり、薬をやめた後に体重が戻りやすくなります。
特に高齢の方では、筋力の低下(サルコペニア)が転倒・骨折・要介護につながる重大な問題です。
体重は減っても体脂肪率が高いままになる「隠れ肥満」状態になる可能性があります。
なぜGLP-1薬を使うと筋肉が落ちるのか
GLP-1薬は食欲を強力に抑えます。食事量が大きく減ることで、エネルギーだけでなくたんぱく質の摂取量も不足しがちになります。たんぱく質は筋肉を作るための材料ですから、不足すると体が自分の筋肉を分解してエネルギーに変えてしまうのです。
今すぐできること:たんぱく質と筋トレ
筋肉を守るための2本柱
✅ たんぱく質を意識して摂る(体重1kgあたり1.2〜1.5g/日を目安に)
✅ 週2〜3回の筋トレ(スクワット・腕立て伏せなど自重でもOK)
食欲が落ちているときでも、たんぱく質だけは意識して確保することが大切です。詳しい食事・運動の組み合わせ方はこちらの記事で解説しています。
▶ MEALメソッド:GLP-1薬を使いながら筋肉を守るための実践ガイド次世代の治療薬「ビマグルマブ」——研究段階の新しいアプローチ
論文が注目しているのが、ビマグルマブ(bimagrumab)という新しい抗体薬との併用療法です。
ビマグルマブは「アクチビンII受容体」の働きをブロックすることで、筋肉の分解を抑えながら筋肉量を増やす作用を持ちます。BELIEVE試験(臨床試験)では、セマグルチド(ウゴービの成分)とビマグルマブを組み合わせることで、セマグルチド単独よりも脂肪を落としつつ筋肉を保てる可能性が示されています。
⚠ 日本では現在未承認です
ビマグルマブは現時点で日本では承認されていない研究段階の薬です。日本国内での使用はできません。将来的な選択肢として知っておいてください。
なおセマグルチドについては、SELECT試験(心血管疾患患者対象)で心筋梗塞・脳卒中などのリスクを下げる効果が確認されています。「体重を落とし、心臓も守り、筋肉も保つ」という治療の組み合わせが今後の研究の方向性です。
院長のひとこと
GLP-1薬は確かによく効きます。しかし「体重計の数字を落とすこと」が最終目標ではありません。筋肉を保ちながら脂肪を減らすことで、リバウンドを防ぎ、長期的な健康を手に入れることが本当のゴールです。薬を使いながらも、たんぱく質と運動を意識してほしいのはそのためです。
GLP-1薬の処方・体組成のご相談
札幌の当院では、マンジャロ・ウゴービの処方とともに筋肉を守るための食事・運動指導を行っています。
オンライン診療にも対応(全国対応・アプリ不要)。
ダイエット外来のご予約はこちら電話:011-552-7000(受付時間内)
