Heat Stroke & Salt — The Myth Japanese People Still Believe
「汗をかいたら塩分補給」は日本人には不要だった!
熱中症対策の思い込みを、日本高血圧学会の声明をもとに医師が解説します
「汗をかいたら塩分補充」は日本人には当てはまらない
猛暑が続く夏になると、「熱中症を防ぐために塩分タブレットを食べよう」「スポーツドリンクで電解質を補給しよう」という情報があふれます。一見もっともらしいこのアドバイスですが、じつは日本人の多くには当てはまりません。
2025年夏、日本高血圧学会は「猛暑における水分と塩分の取り方」に関する声明を発表しました。その核心は、「普段から食塩を摂り過ぎている日本人は、大量に汗をかいても、普通の食事をしていれば追加の塩分補充は不要」というものです。
なぜそう言えるのでしょうか?数字を見ると納得できます。
日本人の塩分摂取量はすでに「過剰」
日本人成人に定められた1日あたりの食塩摂取目標量は、男性7.5g未満・女性6.5g未満です。ところが実際の平均摂取量は約10g。目標を2〜3gも上回っています。高血圧と診断されている方はさらに厳しく、1日6g未満が推奨されています。
この状況で、さらに塩分タブレットやスポーツドリンクで塩分を追加すれば、どうなるでしょうか。血圧が上がりやすくなり、心臓や腎臓にも余分な負担がかかります。「熱中症を防ごうとして、血管を傷めている」という本末転倒な事態が起きかねません。
汗に含まれる塩分量について
激しい運動や重労働で大量に汗をかいたとき、確かに塩分も失われます。しかし、普通の食事(3食)で摂取する塩分量(約10g)は、発汗で失われる塩分量を十分にカバーしています。日常的な発汗であれば、食事以外からの塩分補充は必要ありません。
スポーツドリンクと経口補水液の「塩分の落とし穴」
スポーツドリンクや経口補水液は、本当に水分と電解質を失ったとき(激しい運動・嘔吐・下痢など)には大変有効な飲み物です。しかし、日常的な水分補給の代わりとして「ゴクゴク飲む」のは考えものです。
塩分量を確認してみましょう:
- スポーツドリンク(500mL):食塩相当量 約0.5g(+糖分も多い)
- 経口補水液(500mL):食塩相当量 約1.5g
経口補水液を1日2本(1,000mL)飲めば、それだけで3gの食塩が追加されます。高血圧の方の1日目標(6g未満)の半分を、飲み物だけで消費してしまう計算です。
以下の方は、スポーツドリンクや経口補水液を飲む前に主治医に相談してください
・降圧薬を服用中の高血圧患者
・心臓病(心不全など)がある方
・腎臓病がある方
・普段から減塩に取り組んでいる方
こうした方に過剰な塩分は禁物です。水分補給は「水や麦茶」を基本にしましょう。
では何をどう飲めばいいの?正しい水分補給
日本高血圧学会の声明では、水分補給について以下のポイントを挙げています:
- こまめに水分を補給する(必要量は体格・活動量・気温によって異なります。食事からも水分は摂れます)
- 何回かに分けて少量ずつ補給する(一度に大量に飲まない)
- のどが渇く前に定期的に飲む(渇きを感じたときはすでに軽い脱水)
- 食事からも水分を意識的に取る(汁物・野菜・果物など)
飲み物は水や麦茶が最もシンプルで安心です。コーヒーや緑茶もある程度の水分補給になりますが、カフェインの利尿作用(尿を出やすくする働き)を考えると、水・麦茶をメインにするほうが効率的です。
高齢者は特別な注意が必要
「高齢になると熱中症になりやすい」とよく言われますが、その大きな理由のひとつが、加齢によってのどの渇きを感じにくくなることです。若い人と同じように「渇いたら飲む」では、水分が足りなくなっていることに気づかないまま脱水が進んでしまいます。
高齢の方、またはそのご家族に向けた3つのチェックポイントです:
- 室温を温度計で確認し、エアコンを適切に使う(「節電のために消す」で熱中症になる例が多い)
- 「渇いていなくても」1〜2時間ごとに水分を補給する(コップ1杯ずつでOK)
- 食欲がないときも、ゼリー飲料や汁物で水分と栄養を補う
ご本人が嫌がることもありますが、ご家族から声をかけ続けることが命を守ることにつながります。
まとめ:今日から実践できる熱中症と水分補給のポイント
- 塩分タブレットやスポーツドリンクの塩分補充は、普通に食事をしている日本人には不要
- 水分補給は水・麦茶を基本に。こまめに飲む(量は体格・活動量・気温によって異なる)
- スポーツドリンク・経口補水液は本当に大量に汗をかいたときや脱水のときだけ
- 高血圧・心臓病・腎臓病がある方は経口補水液の前に医師に確認
- 高齢者は「渇いていなくても」定期的に飲む習慣を
高血圧でお悩みの方、普段から血圧が高めと指摘されている方は、高血圧外来のページもあわせてご参照ください。減塩の具体的な方法や薬物療法についてご相談できます。
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