CagriSema: Next-Generation Obesity & Diabetes Treatment
セマグルチドを超えた新薬「カグリセマ」——ウゴービより効く仕組みと試験データを解説
GLP-1に「もうひとつの満腹シグナル」を加えた次世代注射薬の試験結果をわかりやすく解説します。
マンジャロやウゴービなど、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる肥満・糖尿病治療薬が次々と登場し、注目を集めています。そのさらに上をいく新薬が、2026年6月にアメリカ糖尿病学会(ADA)で大規模試験の結果を発表しました。その薬の名前は「カグリセマ(CagriSema)」。日本を含む30カ国で実施された試験で、ウゴービ(セマグルチド)を上回る効果が確認されています。
カグリセマとは?——2種類の「食欲を抑えるシグナル」を組み合わせた注射薬
カグリセマは、2種類の有効成分を組み合わせた週1回投与の注射薬です。
- セマグルチド:ウゴービやリベルサスの有効成分。GLP-1受容体という「血糖値を下げ、食欲を抑える」仕組みに働きかける。
- カグリリンチド:「アミリン」という、食事のあとに脳に「もう十分食べた」と伝えるホルモンに似た成分。満腹感をより強くし、胃の動きをゆっくりにする。
GLP-1だけでも十分な効果がありますが、アミリン系の作用を加えることで、脳の「満腹センサー」を2つの経路から同時に刺激できます。これが、単剤よりも高い効果につながると考えられています。
第3相試験で示されたデータ
日本を含む30カ国で2,700例以上を対象に68週間(約16ヶ月)にわたって行われた試験(REIMAGINE 2)では、以下の結果が得られました。
- 血糖値の指標(HbA1c):カグリセマでセマグルチド単剤より約0.2ポイント多く下がった
- 体重減少:カグリセマで平均14%以上の体重減少(セマグルチド単剤は約10%)
- 体重が15%以上下がった方:約4割以上
- 体重が20%以上下がった方:約4人に1人
- 68週間が終わっても、体重減少は頭打ちになっていなかった
また、糖尿病のない肥満症の方を対象にした別の試験(REDEFINE 1)では、約22%の体重減少というさらに大きな効果が確認されています。これはセマグルチド単剤(約15%)を大きく上回る数字です。
マンジャロ・ウゴービとの比較
現在日本で処方できる肥満・糖尿病治療薬との違いを整理します。
| 薬の名前 | 作用の仕組み | 現状 |
|---|---|---|
| ウゴービ・リベルサス (セマグルチド) |
GLP-1受容体のみに作用 | 日本承認済み・処方可 |
| マンジャロ (チルゼパチド) |
GLP-1+GIP 二重作用 | 日本承認済み・処方可 |
| カグリセマ (カグリリンチド+セマグルチド) |
GLP-1+アミリン 二重作用 | 米国審査中・日本未承認 |
カグリセマはマンジャロとも異なる経路で作用します。マンジャロはGIPという食後に分泌されるホルモンを加えた組み合わせですが、カグリセマはアミリンという脳の満腹センサーを活性化する経路を使います。どちらが優れているかを直接比較した試験はまだありません。
日本で使えるのはいつ頃?
カグリセマは2025年末にアメリカのFDA(食品医薬品局)への承認申請が行われ、現在審査中です。日本(PMDA)への申請はまだ行われていません。日本での使用可能時期は未確定で、数年先になる見込みです。
マンジャロやウゴービで体重が大きく減った方が増えている中、さらに上をいく薬の試験結果が出ました。日本での承認はまだ先ですが、この分野は毎年確実に進化しています。「もう少し効く薬が出るまで待とうかな」という気持ちはわかりますが、今の薬でも十分な効果が出ています。現在できる治療を始めながら、新しい選択肢の登場も一緒に待ちましょう。
当院で今すぐ始められる医療ダイエット
カグリセマはまだ日本では使えませんが、当院では現在、以下の薬剤を処方しています。
- マンジャロ(チルゼパチド):GLP-1+GIP二重作用。糖尿病・医療ダイエットに処方可。
- ウゴービ(セマグルチド):肥満症に対する正式適応あり。
- リベルサス(経口セマグルチド):注射が苦手な方向けの飲み薬タイプ。
- SGLT2阻害薬:糖分を尿から排出するタイプ。
参考文献:Jain AB, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. Published online June 7, 2026. / ADA 2026 Scientific Sessions(2026年6月5〜8日). REDEFINE 1: Berg Johansen T, et al. N Engl J Med. 2025.
