Sleep Apnea & Stroke Risk
いびきが脳卒中リスクを高める
睡眠時無呼吸と脳の白質病変
脳ドック受診者1,400人の研究で見えてきた、睡眠の質と脳の健康の深いつながり
「いびきは寝方の問題」と軽視されがちですが、実は脳卒中リスクと深く関わっています。獨協医科大学埼玉医療センターの研究グループが脳ドック受診者約1,400人を詳しく調べたところ、睡眠時無呼吸がある人ほど脳の白質病変(脳卒中のリスクを高めるとされる変化)が多く、症状が重いほど認知機能も低下していたことが報告されました(STROKE 2024)。
睡眠時無呼吸とは——繰り返す酸欠が脳を傷める
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に気道が繰り返し閉じ、呼吸が止まる病気です。1時間あたり5回以上の無呼吸・低呼吸があると診断の目安となります。
無呼吸のたびに血液中の酸素が下がり、心拍数や血圧が急激に変動します。この繰り返しが血管壁を傷め、高血圧・不整脈・心房細動を引き起こしやすくし、最終的に脳卒中リスクを高めます。「大きないびきをかく」「昼間に強い眠気がある」「夜中に何度も目が覚める」という方は、SASの可能性があります。
脳ドックで見えた睡眠呼吸障害と脳の関係
この研究では、頭部MRI・頸部血管超音波・簡易睡眠検査を含む脳ドックを受けた1,392人を分析しました。
・対象者の約73%に何らかの睡眠呼吸障害が認められた
・無呼吸の程度が高いほど、脳室周囲や深部の白質病変が統計的に有意に多かった
・経過観察でも、睡眠呼吸障害のある人は白質病変が時間とともに進んでいた
・認知機能検査(長谷川式・MMSE・前頭葉機能検査)でも、重症になるほどスコアが低い傾向
大脳白質病変とは何か
大脳白質病変は、脳の細い血管が慢性的に傷むことで生じる変化で、MRIで白くぼんやりと見えます。症状が出ないまま進行することも多く、「無症候性脳血管障害」とも呼ばれます。しかし放置すると、脳梗塞・認知症・歩行障害のリスクが高まることが知られています。
今回の研究では、睡眠時無呼吸による夜間の繰り返す低酸素状態と血圧変動が、この白質病変を進める可能性が示されました。さらに経過観察のデータでは、睡眠呼吸障害のある人は時間とともに白質病変が拡大していく傾向があることも確認されています。
「昼間眠い」は認知機能低下のサインかもしれない
研究では認知機能検査を睡眠呼吸障害の重症度別に比較したところ、症状が重い人ほど長谷川式・MMSE・前頭葉機能検査のスコアが低い傾向が統計的に示されました。
「昼間眠い・集中力がない・物忘れが増えた」という症状を「年のせい」と思っている方の中に、未診断の睡眠時無呼吸が隠れているケースは珍しくありません。SASは治療可能な疾患です。
睡眠呼吸障害の評価は脳卒中診療の「ゲームチェンジャー」になりうる
この研究を報告した赤岩靖久氏は「OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)の評価は、大脳白質病変や認知機能低下の早期発見・介入に寄与すると考えられる。睡眠呼吸障害の評価と治療は、脳卒中診療におけるゲームチェンジャーとなりうる」と述べています。
いびきや日中の眠気がある方は、一度睡眠検査を受けてみることをお勧めします。検査は自宅で行えるため、入院の必要はありません。
- 簡易睡眠検査は自宅で行えます(来院して機器をお渡しし、自宅で2晩装着するだけ)
- 検査結果によってはCPAP治療を保険適用で始められます(月約4,500円程度・3割負担)
- 当院では内科としてSAS診療・CPAP管理を行っています
