不眠と睡眠時無呼吸が重なるCOMISA|片方だけで行き詰まる理由

Comorbid Insomnia and Sleep Apnea

不眠と睡眠時無呼吸が重なるCOMISA|片方だけで行き詰まる理由

不眠と睡眠時無呼吸は、同じ人の中で驚くほど高い頻度で重なります

睡眠薬を飲み始めて数年になる。寝つきは以前より良くなった。それなのに朝は頭が重く、昼過ぎには机の前で意識が飛びかける。薬が足りないのかと思って相談すると、増やすかどうかの話になる——。

逆向きの方もいます。いびきを指摘されて検査を受け、睡眠時無呼吸と分かってCPAPを始めた。ところが機械を着けると余計に寝つけず、夜中に目が覚めてマスクを外してしまう。「治療を始めたのに眠りが悪くなった」と感じている。

この2つは正反対の悩みに見えます。片方は「眠れない」、もう片方は「眠っているあいだの問題」です。ところが不眠と睡眠時無呼吸は、同じ人の中で高い頻度で重なります。そして重なっている場合、片方だけを治療しても行き詰まりやすいことが分かってきました。

COMISAとは何か

この重なりにはCOMISA(コミサ)という呼び名があります。英語の「不眠症と睡眠時無呼吸の併存」の頭文字をつないだ言葉で、閉塞性睡眠時無呼吸と不眠症が同じ人に同時にある状態を指します。

両者が併存すること自体は1970年代には報告されていました。しかし長いあいだ別々の専門領域の問題として扱われ、「どこからをCOMISAと呼ぶのか」という共通の決まりがないままでした。研究ごとに不眠の定義も無呼吸の基準もばらばらで、数字を横に並べて比べることが難しい状態が続いていたのです。

2026年に睡眠専門誌に掲載された総説(これまでの研究をまとめて論じた論文)は、この点を整理し、共通の呼び方と診断の進め方を提案しました。両者が単に並んでいるのではなく互いに影響し合う関係であることを名前に反映させる案や、かかりつけ医の場と睡眠専門施設とで手順を分ける流れが示されています。

これは提案の段階です。この総説は既存の研究を読み解いて枠組みを示した論文であり、新しい病名が正式に決まったわけではありません。提案された定義や手順で実際に経過が良くなるのかは、これから確かめる段階だと著者自身が述べています。大事なのは呼び名ではなく、片方が見つかったときにもう片方を確かめる習慣があるかどうかのほうです。

不眠のある人に睡眠時無呼吸はどれくらい隠れているのか

ここは数字がはっきりしています。この分野の研究を集めた総説によると、睡眠時無呼吸がある方のおよそ3〜5割に、臨床的に意味のある不眠症状があります。逆方向も同じくらいで、慢性的な不眠症の方のおよそ3〜4割が睡眠時無呼吸の診断基準を満たします。どちらの入口から入っても、3人に1人前後はもう片方を抱えている計算になります。

実際の睡眠検査データでも同じ傾向が出ています。トルコ全国の多施設で行われた調査では、睡眠時無呼吸が疑われて一晩の精密検査を受けた成人12,715人のうち、不眠症状と無呼吸の両方に当てはまったのは3,275人。およそ4人に1人でした。

日本の状況も見ておきます。国内の健康保険データベースで、心臓や血管の病気がない約178万人を調べた調査では、不眠症として診療を受けていた方がおよそ12%いました。眠れないという訴えは診察室では日常的なもので、その一定割合に、まだ見つかっていない呼吸の問題が混ざっていることになります。

「眠れないのは不眠症だから、いびきは関係ない」は正しいか

これがこのテーマで最も多い誤解です。眠れない自覚がある方ほど「自分の問題は寝つきで、いびきは別の話」と切り分けてしまいます。ご家族から「いびきがひどい」「息が止まっている」と言われていても、本人の困りごとは寝つきなので、診察室でその話題が出てこないことが少なくありません。

しかし呼吸の乱れに伴って、脳が短く覚醒することがあります。この覚醒は本人の記憶に残らないこともあれば、「夜中に何度も目が覚める」「明け方に目が覚めてしまう」という不眠の症状としてそのまま自覚されることもあります。つまり睡眠時無呼吸は、不眠の顔をして現れることがあるわけです。

逆の誤解もあります。「いびきの治療をしているのだから、眠れないのは慣れの問題だ」という受け止め方です。CPAPを始めても寝つけない状態が続くとき、背景に独立した不眠症が隠れていることがあります。慣れを待つあいだに使用時間が減り、結局やめてしまう経過は珍しくありません。症状の見え方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状もご覧ください。

不眠と睡眠時無呼吸が同じ人に重なるのはなぜか

この重なりについては、互いに影響し合っている可能性が考えられています。研究者が整理している道筋は、おおまかに次のようなものです。

  • 無呼吸から不眠へ——呼吸の乱れで一晩に何十回も眠りが浅くなると、眠りは細切れになります。これが続くと「布団に入ると目が冴える」という条件づけができあがり、無呼吸が抑えられた後も不眠だけが残ることがあります
  • 不眠から無呼吸へ——寝つけない時間が長いと、浅い眠りと覚醒を行き来する時間が増えます。浅い眠りの局面では呼吸の調節が不安定になりやすいことが指摘されています
  • 共通の背景——加齢、体重、飲酒、うつや不安、交代勤務は、どちらの側にも同時に働きます

ただしこれらは、観察研究や治療研究から組み立てられた仮説の枠組みです。どちらが先に起きたのかを個々の患者さんについて言い当てられるわけではありません。実務上は、順番を突き止めることより「両方あるかどうかを確かめること」が先に立ちます。

両方が重なると体への負担はどう変わるのか

米国の追跡研究(Sleep Heart Health Study)のデータで15年間の経過を調べた解析があります。対象5,236人のうち、不眠だけの方が170人、睡眠時無呼吸だけの方が2,221人、両方が重なっていた方が137人(およそ3%)でした。

この15年で亡くなった方は全体で1,210人。両方が重なっていた方は、どちらもない方に比べて亡くなるリスクが約1.5倍でした。開始時点でも、高血圧が約2倍、心臓や血管の病気が約1.7倍多くみられています。一方で、不眠だけ・無呼吸だけのグループでは、心臓や血管の病気との明らかな結びつきは出ていませんでした。

もう一つ、米国の診療データベースで睡眠時無呼吸だけの方と、そこに不眠が重なった方を、年齢・持病などの背景をそろえて比べた研究があります。それぞれ165,522人、10年間の経過を追ったものです。

10年間の起こりやすさ(無呼吸だけの方と比べて) 重なりのある方では
脳の血管の病気約1.2倍
脈の乱れ、心臓の血管の病気、血のかたまりができる病気いずれも多い傾向
心房細動、心不全むしろわずかに少なかった
心臓や血管の重い出来事をまとめた指標約1.03倍(ごくわずかな差)
この数字の読み方。いずれも過去の記録をさかのぼって集計した観察研究で、不眠が重なったことが原因でこれらの病気が増えた、と確かめたものではありません。実際、同じ追跡研究を別の切り口で解析した報告では、背景要因をそろえた後は新しく心臓や血管の病気が起きる割合との結びつきがはっきりしなくなっており、結果は解析のしかたで動きます。また「約1.2倍」は2つの集団を比べた差であって、あなた個人の確率がその分だけ上乗せされるという意味ではありません。表の下段のように、差がほとんど出ない項目や逆向きの項目もある点も見落とせません。

糖尿病があるとこの重なりが増えるのはなぜか

先ほどのトルコ全国調査には、続きがあります。糖尿病のある方ではおよそ3人に1人、ない方ではおよそ4人に1人が不眠と無呼吸の重なりに当てはまりました。年齢・体格・喫煙・持病などの違いを考慮しても、この結びつき自体は残っています。ただし考慮後の差は大きなものではなく、糖尿病だけでこの重なりを説明できるわけではありません。

さらに、重なりのある方の中で比べると、糖尿病のある方のほうが眠りの途切れが多く、呼吸の乱れも強い傾向でした。1時間あたりの呼吸の乱れの回数も、酸素が下がる回数も、糖尿病のある方で高く出ています。

ここも慎重に読む必要があります。これはある一時点を横に切って調べた研究で、糖尿病が睡眠の問題を招いたのか、睡眠の問題が血糖の管理を難しくしたのか、どちらが先かは分かりません。言えるのは、糖尿病の経過が思うようにいかず眠りの訴えもある方では、呼吸の問題を一度は考えておく価値がある、ということです。

睡眠薬が効かない・CPAPが続かないのはなぜか

実務でいちばん重要なのはここです。片方だけを見ていると、治療が途中で行き詰まることがあります。

片方だけを見ていると 起きること
不眠だけを扱った場合薬で寝つけるようになっても、朝のだるさや日中の眠気が残る。薬が足りないと考えて量が増えていく
睡眠時無呼吸だけを扱った場合CPAPを始めても寝つけない、装着していられない。使用時間が伸びず治療が続かない

この後半には実際の数字があります。米国の診療データで不眠を併存する睡眠時無呼吸の患者27,071人を調べた解析では、この重なりのある方はCPAPの使用が少ない傾向が示されました。同時に、きちんと使えている方では救急受診や入院が少なかったことも報告されています。

では、続けられるようにするには何が必要か。ここに答えを出そうとした研究があります。睡眠時無呼吸と不眠症を併せ持つ145人を、くじ引きで2つのグループに分け、片方には先に不眠症に対する認知行動療法(考え方と睡眠習慣を組み立て直す非薬物の治療)を4回行ってからCPAPを始めたという無作為化比較試験です。

  • CPAPの1晩あたりの使用時間が、通常の進め方のグループよりおよそ1時間長くなりました
  • そもそもCPAPを始めることを受け入れた方の割合も高くなりました(ほぼ全員 対 約9割)
  • 不眠の重症度は、どちらのグループでも半年後には改善していました

つまり、不眠を先に整えることは無呼吸の治療を成り立たせる土台にもなり得るという結果です。ただしこれは1つの試験で、対象は睡眠の専門施設に紹介された方々です。日本では対面での認知行動療法を提供できる施設が限られており、誰でもこの流れをそのまま受けられるわけではありません。国内ではアプリなどを使う形の研究が進んでいる段階です。CPAP治療の流れはCPAP治療についてにまとめています。

睡眠薬は自分で増やしたり減らしたりしてよいのか

してはいけません。これは重なりがある場合に、特にはっきり言えることです。

「効かないから1錠増やす」「今日は眠れそうだから飲まない」という自己調整は、眠りのリズムをかえって不安定にします。呼吸の問題が隠れている場合、薬を増やしても解決しない部分にこそ原因があるため、量だけが積み上がります。逆に急に自分の判断でやめると、一時的に前より眠れなくなる反応が出ることもあります。

薬の種類によって眠っているあいだの呼吸への影響は異なり、この点は薬ごとに評価が分かれています。だからこそ、いま何をどれだけ飲んでいるかを正確に医師に伝えたうえで、変更は必ず相談して決める必要があります。処方の考え方は不眠症の薬についてで整理しています。

不眠と睡眠時無呼吸のどちらを先に確かめるのか

順番に決まりはありません。困っている症状から入り、もう片方が隠れていないかを問診で確かめる形になります。不眠の訴えで来られた方には、いびき・呼吸が止まっているという指摘・朝の頭痛・起床時の口の渇き・夜間のトイレの回数を確認します。無呼吸で治療中の方には、寝つきにかかる時間、夜中に目が覚める回数、その後に再び眠れるかどうかを確認します。どちらも、聞かなければ出てこない情報です。

睡眠時無呼吸を調べる検査は、ご自宅で一晩機械を着けて眠っていただく簡易的なものと、施設で行う精密な検査があります。方法と数値の意味は睡眠時無呼吸の検査AHI(無呼吸低呼吸指数)とはにまとめています。

検査を行うかどうかは、症状や経過をうかがったうえで診療上必要と判断した場合に限られます。検査を受けること自体を目的とした受診は、保険の対象になりません。

眠りが戻らないとき、明日から何をするか

受診の前でもできることがあります。どれも道具は要りません。

  • 2週間、睡眠の記録をつける——布団に入った時刻、朝起きた時刻、夜中に目が覚めた回数、起きたときの感覚(すっきりした・していない)。書き出すと、思っていたより布団の中の時間が長いことに気づく方が多くいます
  • 眠くないのに布団に入る時間を減らす——「早く寝れば眠れるはず」と就床を早めると、寝つけない時間が延びて「布団=眠れない場所」という結びつきが強まります。眠気が来てから布団に入り、目が覚めて戻れないときはいったん出る。不眠症の認知行動療法の中核にある考え方です
  • いびきと呼吸の止まりをご家族に確認してもらう——同室の方がいなければ、スマートフォンの録音機能で一晩録っておくだけでも情報になります
  • 飲んでいるものをすべて書き出す——処方薬に加えて、市販の睡眠改善薬・風邪薬・鼻炎薬・サプリメント、就寝前のアルコールとカフェイン飲料の時刻まで
  • 就寝前のお酒を2週間やめてみる——寝つきは良くなりますが、後半の眠りを浅くし、のどの筋肉をゆるめて呼吸の乱れを増やします。やめて変化があるなら、それ自体が答えのひとつです。ただし毎日多めに飲む習慣のある方は、急にやめると手の震え・発汗などの離脱症状が出ることがあるため、自己判断で断酒せずまず相談してください
  • 日中の眠気が出る場面を書き留める——午前か午後か、食後か、運転中か。運転中の眠気があった場合は最優先の相談事項です

受診の場では、次の3つを最初に伝えてください。①どの症状がいちばん困っているか(寝つき・中途覚醒・日中の眠気)②いびきや呼吸の止まりを指摘されたことがあるか ③いま飲んでいる薬。この3点が揃うと、片方だけを見て終わることがなくなります。

なお当院の不眠症の診療では、初診・再診とも毎回、マイナンバーカードによる本人確認とお薬情報の確認を行っています(睡眠薬の重複処方を防ぐためです)。お持ちでない方は不眠症としての診療をお受けできません。全体像は不眠症の診療睡眠時無呼吸症候群(SAS)もご覧ください。

よくある質問

不眠と睡眠時無呼吸は、そんなに同時に起こるものなのですか?

珍しくありません。研究をまとめた総説では、睡眠時無呼吸のある方のおよそ3〜5割に臨床的に意味のある不眠症状があり、慢性の不眠症の方のおよそ3〜4割が睡眠時無呼吸の診断基準を満たすと報告されています。トルコ全国の睡眠検査データ12,715人分でも、およそ4人に1人が両方に当てはまりました。眠れないという訴えと、眠っているあいだの呼吸の問題は、逆のことのように見えて同じ方に併存します。

睡眠薬を飲んでも朝すっきりしません。量を増やせばよいですか?

自己判断で増やさないでください。薬で寝つけるようになっても朝のだるさや日中の眠気が残る場合、眠っているあいだの呼吸の問題が隠れていることがあります。この場合は薬を増やしても、原因の部分は変わりません。いびきや呼吸が止まっていると指摘されたことがないかをご家族に確認したうえで、いま飲んでいる薬をすべて持参して主治医にご相談ください。減らすときも同じで、急に自分の判断で中止しないでください。

CPAPを始めたら余計に眠れなくなりました。続けられますか?

不眠が併存している可能性を確かめる場面です。睡眠時無呼吸と不眠症を併せ持つ145人を対象にした無作為化比較試験では、先に不眠症に対する認知行動療法を行ってからCPAPを始めたグループのほうが、1晩あたりの使用時間がおよそ1時間長くなりました。ただし日本では対面でこの治療を受けられる施設が限られています。まずは寝つきや中途覚醒の状況を主治医に具体的に伝え、マスクや圧の調整も含めて相談してください。

糖尿病があると、この重なりが起きやすいのですか?

関連が報告されています。トルコ全国の12,715人を対象とした調査では、糖尿病のある方のおよそ3人に1人、ない方のおよそ4人に1人が不眠と無呼吸の重なりに当てはまりました。重なりのある方の中でも、糖尿病のある方のほうが眠りの途切れや呼吸の乱れが強い傾向でした。ただしある一時点を横に切って調べた研究であり、どちらが先かは分かっていません。

参照した主な資料
Zhang Y、Kushida CA(COMISAの新しい定義・診断の進め方の提案/総説)Sleep Medicine、2026年/Sweetman A ほか(COMISAの双方向の関係・有病率/総説)Sleep Medicine Reviews、2021年/Lechat B ほか(COMISAと全死亡・Sleep Heart Health Study 5,236人・15年追跡)European Respiratory Journal、2022年/Lechat B ほか(COMISAと心血管疾患の有病・発症・同研究)Journal of Sleep Research、2022年/Lu YT ほか(COMISAの10年リスク・TriNetX 165,522人ずつ/後ろ向き解析)Sleep、2026年/Gürkan CG ほか(糖尿病とCOMISA・TURKAPNE 12,715人/横断研究)Journal of Clinical Sleep Medicine、2026年/Sweetman A ほか(CBT-I先行によるCPAP使用時間の増加・145人/無作為化比較試験)Sleep、2019年/Cole KV ほか(COMISAの陽圧呼吸療法と医療資源・27,071人/後ろ向き解析)Chest、2026年/Masuda T ほか(日本の保険データベース約178万人の不眠症の割合)Journal of the American Heart Association、2026年

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