Sweeteners and Blood Pressure
ゼロカロリーに替えたのに血圧が下がらない|人工甘味料と血圧
砂糖を避けたのに血圧が下がらない——英国10万人を10年追った研究が示したことと、示していないこと
缶コーヒーを微糖からブラックに替えた。炭酸飲料は「カロリーゼロ」だけにした。夕食後のアイスもカロリーオフのゼリーに変えた。体重は少し落ちたのに、朝に測る血圧だけが以前と変わらない——診察室でこの話が出ることは珍しくありません。
そこへ、意外な方向から一本の報告が出ました。2026年8月3日、欧州の心臓病学の専門誌 European Heart Journal に掲載された英国の追跡研究です。血圧が正常だった10万人あまりを10年以上追ったところ、甘味料・着色料・香料・糖類を含む食品の割合が高い人ほど、その後に高血圧と診断された人が多かった、という内容でした。名前が挙がったのは加工食品でおなじみの成分ばかりで、そこには体重を気にする人が選びがちな甘味料も含まれています。
ただし「ゼロカロリーは体に悪い」と読むのは早すぎます。人工甘味料と血圧をめぐるこの研究は、実は「あなたがスクラロースを何ミリグラム摂ったか」を測っていません。何を測って何が分かったのか、日本の食卓ではどう受け止めればよいのかを順に整理します。
この記事の内容
甘味料入りの食品が多いと血圧は上がるのか|英国10万人の追跡
研究班はドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのグループ。使ったのは、英国の住民が自ら参加している大規模な健康データベース(UK Biobank)です。
ここから、血圧の薬を飲んでおらず、測定値も140/90mmHg未満で、糖尿病と診断されたこともない10万1,560人が選ばれました。参加時点の年齢はまん中あたりで56歳、血圧はおよそ125/77mmHgという、「まだ高血圧ではない人たち」の集団です。96%は白人でした。
食事は、前日に食べたもの・飲んだものをウェブ上の調査票で答える方式で、食品206品目・飲料32品目について1人あたり最大5回まで集められました(2009〜2012年)。その後、心臓や腎臓への影響を含む高血圧性の病気で診断記録が付いたかどうかを追いかけています。
追跡期間はまん中あたりで10.5年。この間に診断されたのは7,633人(およそ13人に1人)でした。なお、高血圧と診断される前に亡くなった方が3.2%おり、この分は「発症しなかった人」とは別枠で扱う必要があります。
この研究は甘味料の「量」を測ったのか
ここが、この研究をめぐっていちばん誤解されやすい部分です。答えは「測っていない」です。
食事調査で分かるのは「チョコレートバーを1本食べた」という食品名までで、その商品に何がどれだけ入っていたかは分かりません。そこで研究班は、食品ごとに市販品を最大10製品ぶん調べ、そのうち何製品にその添加物が入っていたかを割合にしました(10製品中6製品に香料が入っていれば0.6)。これを食べた量に掛け合わせ、「その添加物を含んでいそうな食品が、その人の食事全体(重さ)の何パーセントを占めるか」という指標にしています。
この研究の「甘味料20%」は、スクラロースを大量に摂ったという意味ではありません。口にしたもの全体の重さのうち2割が、甘味料を含む製品だった、という意味です。ですから「ごく少量でもリスクが上がる」という読み方は、この数字からは出てきません。出てくるのはむしろ「甘味料入りの製品が食生活の中でどれくらいの位置を占めているか」という話です。
甘味料そのものに害があるかを問う従来の安全性評価は「1日に何ミリグラムまでなら大丈夫か」という物差しで行われてきました。今回の研究はそこには踏み込まず、加工度の高い食品がその人の食事に占める割合を原材料表示という別の角度から測ろうとしたものです。研究班自身も、次に詳しく調べるべき候補を絞り込む段階の研究だと位置づけています。
どの添加物が高血圧と関連したのか
9つのカテゴリーと37の個別成分が調べられ、カテゴリーとして関連が示されたのは次の4つでした。「どのくらい多かったか」は、その添加物を含む食品が食事に占める割合が高い人と、ほとんど口にしない人を比べた場合の目安です。
| 添加物のカテゴリー | 比べた食事の割合 | 高血圧と診断された人の多さ |
|---|---|---|
| 着色料 | 食事の2割 と ほぼ0 | 5割ほど多い |
| 甘味料 | 食事の2割 と ほぼ0 | 4割ほど多い |
| 香料 | 食事の4割 と 1割弱 | 4割ほど多い |
| 糖類 | 食事の1割 と ほぼ0 | 2割ほど多い |
個別の成分では、アセスルファムカリウム・アスパルテーム・スクラロース・サッカリン・エリスリトール・キシリトールのほか、かさを増やすための増量剤、ぶどう糖・果糖、細かく分解したたんぱく質、ホエイ(乳清)たんぱくでも関連がみられました。条件を変えた45通りの検討で最後まで一貫して残ったのはアセスルファムカリウム・アスパルテーム・エリスリトール・スクラロースの4つで、体重や腹囲、体脂肪率を考慮に入れた計算でも結果の向きは変わりませんでした。
逆に、関連が出なかったカテゴリーもはっきりしています。うま味調味料(風味増強剤)・加工助剤・加工した油脂・たんぱく質源・添加された食物繊維です。添加物と名の付くものが軒並み悪者になったわけではありません。
この集団全体では、10年あまりで13人に1人(100人なら7〜8人)が高血圧性の病気と診断されました。「4割多い」は、その中で食事に占める割合がいちばん高い人といちばん低い人を比べたときの差です。公表された数字からは、それぞれのグループで100人あたり何人だったかまでは分かりません。両者のあいだに関連が観察されましたが、明日の血圧が跳ね上がるという種類の話ではない、という距離感で受け取るのが正確です。
歯にいいはずのキシリトールも控えるべきなのか
今回の結果でとくに反響が大きかったのがキシリトールです。むし歯予防のガムでおなじみの甘味料が、関連がみられた成分の一覧に入っていました。
背景として、2024年に同じ European Heart Journal から、米国クリーブランドクリニックのグループの報告が出ています。3,000人以上の患者の血液を調べ、血液中のキシリトール濃度が高い人ほど、その後3年間で心筋梗塞や脳卒中を起こした人が多かったという内容で、実験では血を固める働きをする血液中の成分が反応しやすくなる現象も確認されました。エリスリトールについても、2023年に同じグループが Nature Medicine 誌で似た報告をしています。
それでもガムをやめる根拠にはならない
ここで量の感覚が重要になります。市販のキシリトールガム1粒に含まれるキシリトールはおおむね0.5g前後(製品によって異なるため表示をご確認ください)で、1日に数粒噛んでも数グラムです。一方、上の研究で血液中の濃度を大きく動かすために飲んでもらったのは1回30gでした。ガム1粒の60倍にあたる量で、1日に数粒噛む程度ではとうてい届きません。日本フィンランドむし歯予防研究会も2024年8月に見解を出し、むし歯予防で使う範囲の量とは大きく隔たりがあるとしています。
また、エリスリトールもキシリトールも体の中でわずかに作られており、血中濃度が高い人は「たくさん食べた人」とは限りません。濃度と病気の関連は、そのまま摂取量の話には置き換えられないということです。注意が向くとすれば、粉末を砂糖の代わりに調理へ使い、日常的にまとまった量を摂っている場合です。「天然由来だからいくら使ってもよい」という前提だけは、いったん外しておくのが無難です。
この研究で「甘味料が血圧を上げる」と言えるのか
言えません。研究班自身が、原因と結果の関係は分からず、仕組みも不明だと述べています。観察研究——つまり、参加者の生活に手を加えず、記録を追いかけただけの研究だからです。とくに次の5点は、結果を読むときに切り離せません。
- 順序が逆かもしれない——体重や血圧が気になっている人ほどゼロカロリー食品を選びます。「甘味料を選んだから上がった」のか「上がりそうな人が選んでいた」のかは、この形式では切り分けきれません。研究班は追跡開始から2〜4年以内の診断を除く計算も行い結果は変わらなかったとしていますが、完全に打ち消せるわけではありません。
- 食事の記録は最大5回ぶん、しかも15年ほど前のもの——その後10年間の食生活の変化は反映されていません。
- 高血圧は診断記録で拾っている——血圧が高くても診断名が付いていない人は「発症なし」に数えられ、実際より少なく見積もられている可能性があります。
- 甘味料だけを取り出せていない——甘味料入りの製品を多く食べる人は、加工度の高い食品全体を多く食べています。効いているのが甘味料なのか食事全体の質なのかは分けられません。
- 参加者の96%が白人——体格も食習慣も違う日本人にそのまま当てはめられる保証はありません。
加えて、人工甘味料入りの飲料と血圧については以前から結論が定まっていません。4つの追跡研究・22万人あまりをまとめた解析(2016年)では1日1回ぶん増えるごとに1割ほど高いという結果が出た一方、WHOが2023年にまとめた検討では、長期的な影響についての根拠はまだ限られており一貫していないとされています。今回の研究は決着していない議論に一票を投じたもので、決着をつけたものではありません。
日本ではどれくらい人工甘味料を口にしているのか
日本では、市販の食品を実際に買い集めて分析する方式(マーケットバスケット方式)で甘味料の摂取量が定期的に調べられており、アスパルテーム・アセスルファムカリウム・スクラロース・サッカリンのいずれも、安全上の目安として設定されている1日あたりの量を大きく下回っていました。アスパルテームでは目安の1%にも満たない水準です。
ただしこの評価は、体への害の出方、がん、おなかの赤ちゃんへの影響といった観点から組み立てられてきたものです。今回のような生活習慣病との長期的な関連は、その物差しには含まれていません。安全性評価が甘いのではなく、問いの種類が違うということです。
「カロリーゼロ」は本当にゼロではない
日本の食品表示のルールでは、飲料は100mLあたり5kcal未満なら「カロリーゼロ」「ノンカロリー」と表示できます。糖類も100mLあたり0.5g未満なら「糖類ゼロ」と書けます。ゼロ表示=含有量が完全に0ではありません。500mLのペットボトルなら、ゼロ表示でも20kcal台までは入りうる計算です。消費者庁の調査では、この「5kcal未満」というルールを正しく理解していた人は13.5%にとどまりました。
WHOは2023年に何と言ったか
世界保健機関(WHO)は2023年5月、体重管理や生活習慣病の予防を目的として非糖質甘味料を使わないよう推奨するガイドラインを公表しました。理由は「体に毒だから」ではなく、長期的な減量効果が確認できなかったからです。3か月以内の短期では体重が減る一方、6〜18か月では差がなくなっていました。ただしこれは健康な一般の人に向けた推奨で、糖尿病のある方は対象から外れています。血糖のために甘味料を使っている方が、これを理由に自己判断で変える必要はありません。
では砂糖入りに戻したほうがいいのか
いいえ、そこは間違えないでください。砂糖入りの清涼飲料が体重・血糖・血圧のどれをとっても不利であることは繰り返し示されています。「ゼロカロリーが怪しいなら加糖に戻す」という選択はお勧めできません。
そもそも今回の研究は、砂糖入りからゼロカロリーへ替えた人の血圧がその後どうなったかを調べていません。替えることの良し悪しは、この研究だけでは判断できないというのが正確なところです。そのうえで、はっきりしていることから逆算するなら、置き換え先を探すより、甘い飲み物・甘い加工食品そのものの登場回数を減らすほうが着実な一手になります。行き先は水、お茶、無糖の炭酸水です。
血圧のために明日からできること
血圧に効くことがはっきりしている手立ては、実はもっと地味なところにあります。日本高血圧学会は2025年8月に「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を出し、年齢によらず診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満を目標としました。そこへ向けて、取りかかりやすいものから並べます。
- 甘い飲み物の本数を数える——ゼロカロリーかどうかより先に、1週間に何本開けているかを記録します。減らすのはそのあとです。「毎日1本(週7本)を週3本へ」のように、数えられる形の目標にします。
- 塩を1日6g未満へ——日本人の平均は1日9.8g(男性10.7g・女性9.1g)で、目標との差は3〜4gあります。麺類の汁を残すだけで1杯あたり2〜3g減り、この差の大半が埋まります。次に効くのは加工肉・練り物・漬物・インスタント食品の頻度です。
- 野菜・果物・海藻・大豆を1品足す——これらに多いカリウムには、余分な塩分を尿として出すのを助ける働きがあります。ただし腎臓の働きが落ちている方はカリウムを控える必要があるため、指摘を受けたことがある方は自己判断で増やさないでください。
- 体重は数kgから——大幅な減量でなくても、数kgの減少で血圧は動きます。10kg痩せなければ意味がない、ということはありません。
- 家庭血圧を1週間ぶん測る——朝は起床後1時間以内・トイレを済ませ・座って1〜2分してから、夜は寝る前に。1回の機会に2回測って平均を取り、そのまま記録します。低い値だけを選んで書かないことが大切です。
- 週に150分の速歩と、酒量の見直し——1回30分を週5日でも、10分を刻んでも構いません。お酒の量が多い方では、減らすこと自体で血圧が下がります。
1番目は「甘い飲み物の本数」であって「甘味料を絶つこと」ではありません。ゼロカロリーの製品だけを敵にしても、砂糖入りが残っていれば意味が薄くなります。また、甘味料をやめること自体は、2番目以降のどれよりも優先される対策ではありません。生活面の詳しい進め方は高血圧を下げる生活習慣、測り方の細部は家庭血圧の正しい測り方で整理しています。
受診を考えるタイミング
家庭で測った値が続けて高いとき、どこからが相談どきなのかは分かりにくいものです。ここで注意したいのは、先ほどの125/75mmHgは「治療で目指す到達点」であって、これを超えたら即受診という線ではないことです。相談を考える目安はもう少し上に置かれています。
相談を考えるときの参考リスト
- 家庭で朝晩に測った1週間の平均が135/85mmHg以上ある
- 診察室や測定機で140/90mmHg以上を繰り返している
- 130台でも、体重の増加・喫煙・血縁者に高血圧が多いなど重なる事情がある
- 朝の値だけが高い、あるいは夜になっても下がらない
- 若いうちから血圧が高い、または急に上がった
激しい頭痛・胸の痛み・急な手足の脱力やろれつの回りにくさを伴う場合は、目安を待たずに受診してください。
若い方や急に高くなった方では、血圧が高い原因が別の病気にある可能性を診察のうえで検討します(二次性高血圧の原因と検査)。生活面の工夫だけでは届かないときの薬の組み立ては高血圧の薬の種類・選び方にまとめています。
よくある質問|人工甘味料と血圧
Q. ゼロカロリーの炭酸飲料は、やめたほうがいいのでしょうか?
やめなければならない、と言えるだけの根拠はまだありません。今回の研究は観察研究で、原因と結果の向きが確かめられていないためです。ただし、砂糖入りに戻すことはお勧めできません。現実的な落としどころは、ゼロカロリーかどうかを気にするより、甘い飲み物そのものの本数を減らし、水や無糖のお茶の割合を増やすことです。
Q. キシリトールのガムは血圧に悪いのですか?
通常の使い方でガムを噛むぶんには、心配する量には届きません。市販のガム1粒に含まれるキシリトールは0.5g前後で、心臓や脳の血管への影響が報告された研究で1回に飲んでもらった30gとは大きく開きがあります。むし歯予防の効果は別に確かめられていますので、噛むこと自体をやめる理由にはなりません。気をつけるとすれば、粉末を砂糖の代わりに調理で日常的に使っている場合です。
Q. 人工甘味料をやめれば血圧は下がりますか?
下がるという確認は取れていません。今回の研究は、やめた人の血圧がどうなったかを調べたものではないためです。血圧を下げる効果がはっきりしているのは、食塩を1日6g未満に近づけること、体重を減らすこと、飲酒量を見直すこと、体を動かすことです。甘味料を絶つことより、こちらを先に進めるほうが着実です。
Q. 血圧が気になる人が、飲み物でまず変えるとよいのは何ですか?
甘い味のする飲み物を、味のない飲み物に置き換える回数を1日1回つくることです。ゼロカロリーであっても甘い飲み物は甘い飲み物として数えます。あわせて、汁物やスープを飲み干す習慣があれば、そこを残すだけで塩の量がまとまって減ります。飲み物は毎日繰り返される分だけ、変えたときの積み上げが大きくなります。
Krost KM, Eichner G, ほか. Markers of ultra-processed food and incident arterial hypertension in the UK Biobank. European Heart Journal, 2026年8月3日オンライン公開(DOI: 10.1093/eurheartj/ehag614)/Witkowski M, Hazen SL, ほか. Xylitol is prothrombotic and associated with cardiovascular risk. European Heart Journal, 2024年・第45巻2439-2452頁/Witkowski M, ほか. The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk. Nature Medicine, 2023年・第29巻/Kim Y, Je Y. Prospective association of sugar-sweetened and artificially sweetened beverage intake with risk of hypertension. Archives of Cardiovascular Diseases, 2016年・第109巻242-253頁/WHO. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline(2023年5月)/日本フィンランドむし歯予防研究会 見解(2024年8月9日)/日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(2025年8月29日発行)/厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会添加物部会「マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査」/消費者庁 食品表示基準(栄養成分表示の「含まない旨」の基準)/厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
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