スタチン不耐でも使える脂質低下薬ベムペド酸、血栓リスクを42%低減か

Bempedoic Acid and VTE Risk

スタチンが使えない方向けのコレステロール薬
血栓(VTE)リスクも約42%低減か

2026年5月、脂質低下薬ベムペド酸が深部静脈血栓症・肺塞栓症のリスクも下げる可能性が大規模試験の事後解析で示されました。スタチンが副作用で使えない患者さんに重要な知見です。

「コレステロールの薬を飲もうとしたが、筋肉痛がひどくて続けられなかった」──そういったご経験のある方に向けた新しい選択肢として、「ベムペド酸」という脂質低下薬があります。2026年5月、この薬の大規模試験(CLEAR Outcomes)のデータを再解析した研究が米国心臓病学会誌(JAMA Cardiology)に発表され、コレステロールを下げる効果に加えて深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などの静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが約42%低かったことが示されました。

スタチンが使えない方の選択肢として登場したベムペド酸

コレステロール(LDL-C)を下げる薬の代表がスタチン系薬剤です。しかし、スタチンを飲み始めると筋肉痛・筋肉のこわばり・筋力低下などの筋関連症状が出て、継続できない方が一定数います(これを「スタチン不耐」と呼びます)。

ベムペド酸は「ATP クエン酸リアーゼ(ACL)阻害薬」と呼ばれる新しいクラスの薬です。スタチンと同じコレステロール合成経路に作用しますが、肝臓でのみ活性化されて筋肉には作用しないため、スタチンで起きやすい筋関連副作用が生じにくいという特徴があります。LDL-Cを約15〜20%程度下げる効果が示されており、スタチン不耐の患者に対する選択肢として日本でも承認されています。

大規模試験CLEAR Outcomesとは

今回の発見は、すでに完了している大規模第III相試験「CLEAR Outcomes」の事後解析(追加解析)として報告されたものです。

CLEAR Outcomes試験の概要
項目内容
対象32カ国・1,250施設の約13,970人
スタチン不耐かつ心血管リスクが高い成人(LDL-C 100mg/dL以上)
比較ベムペド酸 vs. プラセボ(偽薬)
追跡期間中央値約40.6カ月(3年超)
主な主要評価結果(2023年報告)心血管死・心筋梗塞・脳卒中・冠血行再建術の4点複合エンドポイントが約13%低減(Nejm 2023)

今回の発見:血栓リスクが約42%低かった

Cleveland ClinicのSpiazzi氏らは今回、CLEAR Outcomes試験のデータを用いて「静脈血栓塞栓症(VTE)」に絞った事後解析を実施しました。VTEとは深部静脈血栓症(DVT:足の静脈に血栓ができる)と肺塞栓症(PE:肺の血管に血栓が詰まる)を合わせた病態で、放置すると致死的になることもあります。

CLEAR Outcomes試験におけるVTEリスクの比較
血栓の種類ベムペド酸群のリスク(プラセボ群比)
VTE全体(DVT+PE)約42%低かった(統計的に有意)
DVT(深部静脈血栓症)約44%低かった(統計的に有意)
PE(肺塞栓症)約39%低かった(統計的に有意)

追跡中に発生したVTEイベントはプラセボ群67件・ベムペド酸群39件(計106件)

年齢・性別・民族など様々なサブグループで解析しても、結果はおおむね一貫していました。

なぜベムペド酸が血栓リスクを下げるのか?

ベムペド酸は直接的な抗凝固作用を持つ薬ではありません。研究者らは、スタチンがVTEリスクを低減することが以前から知られているのと同様に、ベムペド酸も炎症を抑える作用(hsCRP値の低下)とLDLコレステロール低下効果が同じ生物学的経路を通じてVTE発生に影響した可能性があると考察しています。

血栓形成には慢性的な炎症が関与しており、動脈だけでなく静脈の血栓においても、炎症経路の制御が保護的に働く可能性があります。スタチン・PCSK9阻害薬でも同様のVTEリスク低減が報告されており、脂質低下療法全般がもつ抗炎症効果の発露かもしれません。

⚠️ 重要な解釈の注意点:
今回はあくまで事後解析(後付け解析)であり、VTE予防を主目的に設計された試験ではありません。発生したVTEイベント数も106件と少なく、研究者自身も「仮説生成的なものとして解釈すべき」と記しています。「ベムペド酸でVTEを予防できる」という確定的な結論ではなく、今後の前向き試験による検証が必要な段階です。

注意すべき副作用

CLEAR Outcomes試験において、ベムペド酸群でプラセボ群より多く報告された主な副作用は以下のとおりです。

  • 痛風・高尿酸血症:ベムペド酸は尿酸排泄を一部阻害するため、尿酸値が上昇することがあります。もともと痛風がある方は特に注意が必要です
  • 肝酵素の上昇(通常は軽度・可逆性)
  • 腎機能障害
  • 胆石症

これらの副作用があるため、処方にあたっては尿酸値・肝機能・腎機能の経過観察が推奨されます。特に痛風の既往がある方には慎重な判断が必要です。

当院での脂質異常症の診療について

スタチンを試みたが副作用で継続できなかった方、LDL-Cが目標に達しない方など、脂質管理に悩みをお持ちの方はぜひご相談ください。ベムペド酸の適応・リスク・他の選択肢(エゼチミブ・PCSK9阻害薬など)を含めて個別に判断いたします。

気になることや、検査・治療のご希望がある方は
下記から受診予約いただけます

※お電話でのご予約やご相談は承っておりません。

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ゆうしん内科クリニック(札幌市中央区南20条西16丁目2-1)

よくある質問

スタチンの副作用で筋肉痛が出た場合、ベムペド酸に切り替えられますか?

スタチン不耐(スタチンが副作用で使用できない、または希望しない)の方に対する選択肢として、ベムペド酸は適応があります。ただし、スタチン不耐かどうかの評価、他の薬(エゼチミブ等)との組み合わせ、尿酸値・腎機能などの確認が必要です。まずは診察でご相談ください。

血栓予防のためにベムペド酸を使いたいのですが、可能ですか?

現時点では、ベムペド酸のVTE(血栓)予防効果はあくまで事後解析の結果であり、VTE予防を目的として処方することは保険適用の範囲内ではありません。ベムペド酸はあくまで脂質低下(LDL-C低下)を目的として処方される薬です。血栓リスクについては抗凝固療法などの別の治療が適応となる場合があります。

ベムペド酸はどんな人に向いていますか?

LDL-Cが目標に達していない、スタチンが使えない・使いたくない患者さんで、心血管疾患のリスクが高い方に検討されます。ただし痛風の既往がある場合は尿酸値上昇に注意が必要です。腎機能・肝機能・尿酸値を確認した上で処方の適否を判断します。