Saturated vs Unsaturated Fatty Acids
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い
コレステロール・中性脂肪への影響
「油は全部悪い」は誤解です。どの脂がコレステロールを上げ、どの脂が中性脂肪を下げるか整理します
「脂肪酸」とは何か|油を怖がる前に知っておくこと
健康診断でコレステロールや中性脂肪を指摘されると、「もう油は全部やめよう」と考える方は少なくありません。しかし脂質は、細胞膜の材料であり、ステロイドホルモンやビタミンDの原料でもある、体に欠かせない栄養素です。問題は「脂を摂るかどうか」ではなく、「どの種類の脂肪酸をどれだけ摂るか」です。
油脂は消化の過程で脂肪酸という最小単位に分解されて吸収されます。脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分かれ、さらに不飽和脂肪酸の中にもオメガ9・オメガ6・オメガ3という種類があります。それぞれコレステロールや中性脂肪への影響がまったく異なります。
飽和脂肪酸|LDLコレステロールを上げる主犯
飽和脂肪酸の最大の特徴は「常温で固まる」ことです。冷蔵庫から出したバターが固体なのはこのためです。動物性の脂に多く含まれますが、例外として植物性でも飽和脂肪酸が豊富なものがあります。
飽和脂肪酸が多い食品:
- バター・生クリーム・チーズなどの乳製品
- 牛肉・豚肉の脂身(霜降り肉、バラ肉など)、ラード、牛脂
- 鶏肉の皮
- ヤシ油(coconut oil)・パーム油 ← 植物性なのに飽和脂肪酸が多い
- 市販のスナック菓子・洋菓子・アイスクリーム(上記の油脂を使用)
飽和脂肪酸を過剰に摂ると、肝臓のLDL受容体(悪玉コレステロールを血液から回収する受容体)の発現が抑制され、血中LDLコレステロールが上昇します。日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインでは、飽和脂肪酸の摂取量を1日の総エネルギーの7%未満に抑えることを推奨しています。1日2,000 kcalの食事なら約15gが目安で、バター大さじ1(約14g)だけで飽和脂肪酸は約7g。感覚よりずっと少ない量で上限に近づきます。
ヤシ油(coconut oil)は要注意
「植物性だから健康的」と思われがちなヤシ油ですが、脂肪酸の約90%が飽和脂肪酸で、バターよりも割合が高い食品です。LDLコレステロールを上昇させることが複数の試験で示されており、積極的な摂取は勧められません。
不飽和脂肪酸|オメガ9・6・3の3種類を整理する
不飽和脂肪酸は「常温で液体」のものが多く、植物油や魚の油に豊富です。3つの種類があり、体への働きが異なります。
オメガ9(一価不飽和脂肪酸)|LDLを上げない安定した脂
オリーブオイルやアボカドに多く含まれるオレイン酸(オメガ9)は、LDLコレステロールをほとんど上げず、中性脂肪にも中性的に働きます。地中海食の中心的な油脂として、心血管疾患リスク低減に関するエビデンスが蓄積されています。バターやラードをオリーブオイルに置き換えることは、合理的な選択です。
オメガ6(多価不飽和脂肪酸)|現代食では摂り過ぎに注意
大豆油・コーン油・ごま油・サラダ油などに多いリノール酸(オメガ6)は、LDLを軽度に下げる作用があります。ただし現代の日本の食生活ではオメガ6は十分足りており、意識して増やす必要はありません。問題はオメガ6の過多ではなく、飽和脂肪酸の過多です。
オメガ3(多価不飽和脂肪酸)|中性脂肪を下げる最強の脂
オメガ3脂肪酸は中性脂肪(トリグリセライド)を強力に低下させることが、複数の大規模臨床試験で確認されています。十分量を摂ると中性脂肪が20〜30%低下するとの報告もあります。
- EPA・DHA:サバ・イワシ・サンマ・アジなど青魚の脂。最も効率的なオメガ3摂取源
- α-リノレン酸:亜麻仁油・えごま油・クルミ。体内でEPAに変換されるが変換効率は約5〜10%と低め
5種類の脂肪酸が脂質に与える影響|一目でわかる比較表
| 種類 | 代表的な食品 | LDL | 中性脂肪 | HDL |
|---|---|---|---|---|
| 飽和脂肪酸 | バター・肉の脂身・ヤシ油 | ↑上昇 | ― | ― |
| トランス脂肪酸 | 旧マーガリン・ショートニング | ↑↑強く上昇 | ― | ↓低下 |
| オメガ9 | オリーブオイル・アボカド | ― | ― | ― |
| オメガ6 | サラダ油・大豆油・ごま油 | ↓軽度低下 | ― | ― |
| オメガ3 | 青魚(EPA・DHA)・亜麻仁油 | ↓軽度低下 | ↓↓大幅低下 | ↑軽度上昇 |
トランス脂肪酸|最も避けるべき脂肪酸
比較表の中で特別に注意が必要なのがトランス脂肪酸です。工業的に植物油を水素添加して製造する「部分水素添加油脂」に多く含まれていました。LDLを上昇させるだけでなく、HDL(善玉コレステロール)を低下させるという、最も有害な組み合わせの働きをします。
かつてのマーガリン・ショートニング・市販のフライドポテト・スナック菓子に多く含まれていましたが、現在は多くのメーカーが自主的に低減しています。食品表示に「部分水素添加油脂」「植物油脂(加工)」という記載がある製品には今でも注意が必要です。
実践的な置き換えガイド|今日からできる脂質の見直し
脂肪酸のバランスを改善するには「減らす」と「置き換える」を意識します。オリーブオイルや魚油も食べ過ぎればカロリー過多になるため、「置き換え」の発想が基本です。
飽和脂肪酸を減らすために:
- 調理油をバター・ラードからオリーブオイルに替える
- 牛バラ・豚バラなど脂の多い部位を、鶏むね肉・赤身肉・魚に替える
- 生クリームを使うデザート・料理の頻度を下げる
- チーズ・アイスクリームは「日常食」ではなく「ときどきの楽しみ」に位置づける
オメガ3を増やすために:
- サバ・イワシ・サンマ・アジを週2〜3回の食卓に取り入れる
- 缶詰(サバ缶・イワシ缶)は手軽でコストも低く、EPA・DHAを効率よく摂れる
- サラダのドレッシングをえごま油ベースにする(加熱調理には不向き)
これらの改善が実際の数値にどのくらい影響するか
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