注射だったコレステロールの薬に「飲み薬」が出てきそうです

Oral PCSK9 Inhibitors in Development

注射だったコレステロールの薬に
「飲み薬」が出てきそうです

開発段階の話です。日本ではまだ使えません

この記事について
海外で行われた臨床試験の結果をご紹介するものです。ここで扱う薬は日本ではまだ承認されておらず、処方することはできません。特定の薬をお勧めするものでも、入手方法をご案内するものでもありません。

コレステロールの薬というと、多くの方が思い浮かべるのはスタチンでしょう。飲み薬で、よく効いて、長い実績があります。

ただ、スタチンを飲んでいても目標まで下がらない方はいます。そういう場合の次の一手として、PCSK9阻害薬という薬があります。よく効くのですが、大きな弱点がありました。注射だということです。

PCSK9阻害薬とは何か

肝臓には、血液中のLDLコレステロールを取り込んで処理する「受け皿」があります。PCSK9という物質は、この受け皿を壊してしまう働きをします。受け皿が減れば、血液中のLDLコレステロールは高いままになります。

PCSK9阻害薬は、この「受け皿を壊す働き」を止める薬です。受け皿が保たれるので、LDLコレステロールが下がります。スタチンとはまったく別の仕組みで効くため、スタチンに上乗せして使えます。

ただし現在の薬は注射です。2〜4週間に1回ご自身で打つタイプのほか、半年に1回、医療機関で受けるタイプもあります。よく効く薬なのですが、注射というだけで選択肢から外れてしまう方が一定数いらっしゃいます。

飲み薬タイプの試験結果

2026年、飲み薬タイプのPCSK9阻害薬について、第Ⅲ相試験(承認申請の根拠になる段階の試験)の結果が発表されました。

対象になったのは、すでにスタチンを飲んでいるのにLDLコレステロールが目標に届いていない方です。心筋梗塞や脳梗塞などをすでに起こした方、あるいはこれから起こすリスクが中程度以上と判断された方が含まれています。

■ 何と比べたのか
比較の相手はすでにある飲み薬(エゼチミブ/商品名ゼチーア、ベムペド酸/商品名ネクセトール、またはその併用)でした。「注射と比べた」のではなく、「飲み薬どうしで比べた」という点が重要です。
結果飲み薬タイプのPCSK9阻害薬のほうが、LDLコレステロール・ApoB・non-HDLコレステロールをより大きく下げた
安全性比較対象となった他の飲み薬と同程度だった

つまり、「飲みやすいけれど効果は控えめ」ではなく、「飲み薬なのに、既存の飲み薬より下がった」という結果です。

これが実用化されると何が変わるのか

注射という理由で治療の選択肢が狭まっていた方にとって、状況が変わる可能性があります。

  • 注射に強い抵抗がある方
  • 自己注射の手技が難しい方(手の細かい動きが苦手、視力の問題など)
  • 2〜4週ごとの通院や自己管理が続かなかった方

ただし、それが実際に選択肢になるかどうかは、今後の承認次第です。

ただし、まだ分かっていないことがあります

この試験が確かめたのは「数値が下がるか」までです。
心筋梗塞や脳梗塞が実際に減るのか——いちばん知りたいことは、この試験からは分かりません。それを確かめるには、より長期の別の試験が必要です。
また、長く飲み続けたときの安全性についても、これから積み上がる段階です。

そして繰り返しになりますが、日本では承認されていません。いつ使えるようになるか、そもそも承認されるかどうかも現時点では分かりません。

今できること

新しい薬を待つあいだにも、できることはあります。というより、新しい薬が出ても土台は変わりません。

  • 今の薬をきちんと続ける——スタチンを自己判断でやめないでください
  • 目標値を知る——ご自身のLDLコレステロールの目標は、これまでの病歴やリスクによって変わります(LDLは55未満まで下げるべきか
  • 飲み薬の選択肢はすでに複数あります——スタチンだけで足りない場合に上乗せできる飲み薬があります。ただし自己判断で追加・変更せず、必ず主治医とご確認ください脂質異常症の薬
  • 生活習慣は薬と競合しません生活習慣で下げる方法

― 医師のひとこと ―

「注射はちょっと」と言われて、そこで話が終わってしまうことがあります。効くと分かっている手立てが、投与の形というだけで使えない。もったいないと感じてきました。

ですから飲み薬タイプの開発が進んでいることには注目しています。ただ、今回わかったのは「数値が下がる」ところまでです。数値が下がることと、心筋梗塞が減ることは、必ずしも同じではありません。そこは慎重に見ています。

そして何より、今すでに使える手立てを使い切れているかのほうが、多くの方にとって重要です。新しい薬を待つより先に、今の治療を見直すほうが確実に効きます。

よくある質問|飲み薬タイプのPCSK9阻害薬

Q. 飲み薬タイプのPCSK9阻害薬は、日本でいつ使えますか?

現時点では分かりません。日本ではまだ承認されておらず、通常の診療で処方を受けることはできません。海外で第Ⅲ相試験の結果が報告された段階で、いつ承認されるか、そもそも承認されるかどうかも未定です。

Q. PCSK9阻害薬は今の注射と何が違うのですか?

効く仕組みは同じで、投与の形が違います。PCSK9は、肝臓がLDLコレステロールを取り込むための受け皿を壊す働きをする物質です。PCSK9阻害薬はその働きを止めることで受け皿を保ち、LDLコレステロールを下げます。現在使える薬は注射で、2〜4週間に1回ご自身で打つタイプのほか、半年に1回医療機関で受けるタイプもあります。これに加えて飲み薬タイプの開発が進んでいます。

Q. 数値が大きく下がるなら、心筋梗塞も減るのですか?

今回の試験からは分かりません。確かめられたのはLDLコレステロールなどの数値が下がるところまでで、心筋梗塞や脳梗塞が実際に減るかどうかを見るには、より長期の別の試験が必要です。長く飲み続けたときの安全性についても、これから積み上がる段階です。

Q. 注射が苦手です。今できることはありますか?

飲み薬の選択肢はすでに複数あり、スタチンだけで目標に届かない場合に上乗せできる薬があります。また、ご自身のLDLコレステロールの目標値は、これまでの病歴やリスクによって変わります。自己判断で追加・変更せず、今の治療で使い切れていない選択肢がないかを主治医とご確認ください。

コレステロールのご相談|札幌市中央区 ゆうしん内科クリニック

当院では、この未承認薬の処方や入手のご相談には対応しておりません。現在の治療については通常の診察の中でお聞かせください

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