痛風発作のあと「脈が速い・乱れる」は偶然じゃない

Gout Attack and Arrhythmia Risk

痛風発作のあと「脈が速い・乱れる」は偶然じゃない

発作後60日間、心臓のリスクが高まることが欧州2カ国の大規模研究で確認されました。

痛風の発作が起きると、足の親指の付け根の激痛に意識が集中してしまいます。でも実は、その時期に心臓にも注意が必要であることが、最近の研究で明らかになってきました。

2026年6月、英国とスウェーデンで行われた大規模な研究(英国約2万例・スウェーデン約2,000例)が医学誌Lancet Primary Careに掲載されました。それによると、痛風の発作後60日間は、脈が速くなったり乱れたりする「頻脈性不整脈」が起きやすくなることが確認されています。

痛風発作のあとに不整脈が起きやすいのはなぜ?

痛風発作のとき、体の中では強烈な炎症が起きています。尿酸の結晶が関節に沈着すると、免疫細胞がそれを攻撃しようとしてさまざまな炎症シグナルを放出します。この炎症シグナルは関節の中だけにとどまらず、血流に乗って全身に広がります。

心臓もその影響を受けます。炎症シグナルが心臓の細胞に届くと、心臓の電気的なリズムを乱し、脈が速くなったり不規則になったりする「頻脈性不整脈」(ひんみゃくせいふせいみゃく)を引き起こす可能性があります。

さらに、痛風発作の激しい痛みや緊張は、自律神経を乱すことも知られています。自律神経のバランスが崩れると、心臓の鼓動にも影響が出やすくなります。

発作後どのくらいのあいだリスクが続くのか

今回の研究では、2つの手法で同じ患者を分析したことで、より信頼度の高い結果が得られています。

英国コホート(約2万例)の結果:
  • 発作後0〜30日:発作がなかった時期に比べて約1.4倍のリスク上昇
  • 発作後31〜60日:約1.3倍と、引き続きリスクが高い状態が続く
  • 60日を超えると:ベースラインとの差はなくなる
スウェーデンコホート(約2,000例)の結果:
  • 発作後0〜30日:約4倍のリスク上昇(最大値)
  • 発作後31〜60日:約2倍のリスクが継続

スウェーデンのデータはサンプル数が少ないため数字は大きく出ていますが、両コホートで「発作後60日間はリスクが高い」という方向性は一致しています。

痛風の炎症が心臓の電気を乱す仕組み

少し詳しく説明します。痛風発作で放出される炎症物質(インターロイキン-1βなど)は、心臓の筋肉や心房の細胞に直接作用することが動物実験で確認されています。心臓の細胞がこの炎症物質にさらされると、電気信号の伝わり方が変わり、脈の乱れが生じやすくなります。

これは痛風だけに起きることではありません。他の強い炎症(インフルエンザや肺炎など)のあとにも同様に不整脈が起きやすくなることが知られており、「炎症→心臓の電気的乱れ」という経路は医学的にもよく確認されています。

こんな症状が続いたら、早めに受診を

発作後60日以内に以下のような症状が気になる場合は、早めに受診することをおすすめします。

  • 胸がドキドキする(動悸)
  • 脈が飛ぶ感じ・一瞬止まる感じがある
  • 脈がすごく速くなる時間がある
  • 息が切れやすい、軽いめまいがある

これらの症状は、痛風の発作が治まったあとでも起こりえます。「足は治ったから大丈夫」と思わずに、気になったら相談してください。

🏥 医師のひとこと

痛風の患者さんに「最近、脈が乱れませんか?」と聞くと、「そういえば…」とおっしゃる方が時々います。発作のときは足の痛みに気を取られていて、心臓の変化には気づきにくいものです。今回の研究は、発作後2ヶ月は足だけでなく心臓にも意識を向けてほしいという、大事なメッセージだと思っています。

痛風のある方が今日から意識できること

  1. 発作後60日間は動悸・脈の変化に注意する——毎日手首で脈を触れてみるだけでも変化に気づきやすくなります。
  2. 尿酸値の治療を継続する——発作を繰り返さないことが、長期的に心臓のリスクを下げることにもつながると研究者たちは考えています。
  3. 症状があれば早めに受診する——「少しくらい大丈夫」と思わずに、動悸や息切れが気になったら内科を受診してください。
  4. 生活習慣の改善も継続する——水分補給・プリン体の多い食品を控えることは、発作の予防とともに全身の炎症を抑えることにもつながります。

気になることや、検査・治療のご希望がある方は
下記から受診予約いただけます

※お電話でのご予約やご相談は承っておりません。

平日:予約優先(混雑時は数時間お待ちいただく場合がございます)|土曜:完全予約制

ゆうしん内科クリニック(札幌市中央区南20条西16丁目2-1)

参考文献:Cipolletta E, et al. Lancet Prim Care. Published online June 11, 2026.