舌下免疫療法が始まって12年。分かってきたこと

Twelve Years of Sublingual Immunotherapy

舌下免疫療法が始まって12年。分かってきたこと

日本は、この治療で世界の先頭を走っています

2014年10月、日本でスギ花粉症の舌下免疫療法が保険で使えるようになりました。それから12年。いま分かっていることを整理します。

この治療は、当院でも行っています。スギ花粉とダニの2種類が対象です。

舌下免疫療法とは何が違うのか

いつもの飲み薬や点鼻薬は、出ている症状を抑える治療です。飲めば楽になりますが、やめれば戻ります。

舌下免疫療法は違います。アレルギーの原因そのものを少しずつ舌の下に入れて、体を慣らしていく治療です。うまくいけば、治療を終えたあとも効果が続くことが期待できます。

日本はこの治療の先頭を走っている

意外に思われるかもしれませんが、この分野で日本は進んだ位置にあるとされています。以下は、この治療に長く携わってきた医師が整理した見解です。

■ 日本の舌下免疫療法の立ち位置(専門医による整理)
  • スギ花粉の舌下免疫療法は、日本で行われている(スギ花粉症が問題になる地域が限られるため)
  • ダニの舌下免疫療法が保険で始まったのは日本が早く、いまでは多くの国に広がった
  • 小児への舌下免疫療法も、日本が早い時期から行っている
  • 花粉とダニの両方を同時に行う形も、日本で行われている
  • 海外では専門医が行うことが多いが、日本ではかかりつけ医が広く行っている
  • 途中でやめてしまう方の割合が、諸外国に比べて低い

誰が受けられるのか

診療の指針では、症状の程度が軽い方から重い方まで、幅広く選択肢になるとされています。当院でも5歳以上を対象としています。

ただし、誰でも受けられるわけではありません。ぜんそくの状態が不安定な方、一部の持病や飲んでいる薬によっては受けられないことがあります。実際に受けられるかどうかは、診察のうえで判断します。
お子さんについて、注意点があります。
  • 薬を舌の下にきちんと保持できるか——これができないと効果が出ません
  • 飲んだあと、激しい運動を避ける必要がある——この理由を理解して守れるかどうか
経験上、5歳ではうまくいかないことがあり、7歳ならほとんどの方ができるとされています。無理に低年齢で始めないほうがよい、という考え方です。

高齢の方については、65歳を超えるあたりから十分な効果が得られにくくなる可能性が指摘されています。アレルギーとは別の原因による鼻水(気温差などによるもの)が混ざってくることも理由のひとつです。

いつ始めるのがよいか

スギ花粉の場合、飛散の時期を避けて始めるのが原則です。効果が出るまで数か月かかるためです。

■ 当院での開始時期
対象開始できる時期
スギ6〜11月(飛散期にあたる2〜4月は開始できません)
ダニ本来は1年中いつでも。ただしスギ花粉症も併せ持つ方は、スギと同じ扱いにするのが安全です

つまり、いま症状が出ている最中には始められません。「今年つらかったから来年に備えたい」という方は、症状が落ち着いた6月以降にご相談ください。秋のうちに始めておけば、翌春に間に合います。

ダニの治療を受ける方の約9割が、スギに対する反応も持っているという報告があります。「ダニだけのつもり」でも、実はスギも持っていることが多いということです。

どれくらい続けるのか

世界保健機関がまとめた見解文書では3年以上が推奨されています。

これに加えて、国内でこの治療を長く行ってきた施設からの報告では、3シーズンより4〜5シーズン続けた方のほうが、終了後の効果が良好だったとされています。その施設では5年で終える方針をとっているとのことです。ただし、これは特定の施設の経験に基づく報告です。

効果はどれくらいか

対象効果の出方
スギ初年度から効果があり、続けるほど強まっていく
ダニ1年目で効果が出て、そこで安定する

一部の方では症状がほぼ出ない状態まで到達します。多くの方では、症状が軽くなり、併用する薬を減らせるという形になります。

期待しすぎないでいただきたい点があります。スギとヒノキは近い植物で、スギ花粉症の方の約8割がヒノキ花粉症も持っています。ところがこの治療のヒノキへの効果は限定的で、効かない方も多いのが実情です。
治療を受けた方の半数が「ヒノキには効きが弱い」と感じているという報告もあります。

札幌・北海道の方が知っておくべきこと

ここは、本州の情報をそのまま読んではいけない部分です。

■ 北海道の花粉事情
花粉北海道での状況
スギ分布が道南の一部に限られます。それ以外の地域でも観測はされますが、量は多くありません
シラカバ(カバノキ科)4月下旬〜6月上旬に飛散。北海道ではシラカバ花粉症の方が多いとされています
そして、ここが重要です。舌下免疫療法の薬は、日本ではスギとダニの2種類しかありません。シラカバに対する舌下免疫療法の薬は、国内にはありません。

つまり、春の症状の原因がシラカバであれば、この治療の対象にはなりません。北海道ではシラカバ花粉症の方が多いとされていますので、まず何に反応しているのかをはっきりさせることが出発点になります。

なお、そのための検査は、症状の経過を踏まえて医師が診療上必要と判断した場合に行うものです。検査を受けること自体を目的とした受診は、保険の対象になりません。

なお、シラカバ花粉症の方は、リンゴ・モモ・サクランボなどバラ科の果物を食べたときに、口の中がかゆくなったり腫れたりすることがあります(口腔アレルギー症候群)。心当たりがあれば、診察時にお伝えください。

続けるコツ

この治療の成否は、続けられるかどうかにかかっています。

  • 毎日飲むこと——目安として、7〜8割以上の日で飲めていることが望まれます
  • 寝る前に飲まない——とくに自分で管理する年代のお子さんでは、寝落ちして飲み忘れる原因になります
  • 効いていることを実感する——症状の記録をつけておくと、去年との違いが分かります
  • 始める前に説明を理解しておく——起こりうる反応を知っていれば、慌てずに済みます

1年に1割程度の方がやめてしまうのは、決して悪い数字ではないとされています。5年で6割以上の方が完遂できていれば、良好な経過という目安です。

くわしい内容は舌下免疫療法|スギ・ダニ対応をご覧ください。

この治療でいちばん強調しておきたいのは「時間がかかる」という点です。数年単位の話です。毎日飲んで、年に何回か通っていただく。手間のかかる治療であることは、間違いありません。

それでも選択肢として挙げる理由は、ほかに「体質そのものに働きかける」治療がないからです。飲み薬は、飲んでいるあいだだけ楽になります。この治療は、終わったあとの話ができます。

そして、日本では途中でやめる方の割合が諸外国より低いとされています。それだけ、患者さんが真面目に続けてくださっているということでしょう。

毎年の薬代と、季節ごとのつらさ。それが何十年も続くと考えたとき、数年かけて体質に働きかけるという選択肢を、一度考えてみる価値はあります。

ただ、札幌では歯がゆい事情があります。北海道で多いとされるシラカバ花粉症に、この治療の薬がないことです。「根本から治したい」というご希望に、いつでもお応えできるわけではありません。だからこそ、まず何に反応しているのかをはっきりさせる。そこから話が始まります。

よくある質問|舌下免疫療法

Q. 舌下免疫療法は何歳から受けられますか?

当院では5歳以上を対象としています。ただしお子さんの場合、薬を舌の下にきちんと保持できること、飲んだあと激しい運動を避ける必要を理解できることが条件になります。経験上、5歳ではうまくいかないことがあり、7歳ならほとんどの方ができるとされています。無理に低年齢で始めないほうがよい、という考え方です。

Q. どれくらいの期間続ける必要がありますか?

世界保健機関がまとめた見解文書では3年以上が推奨されています。加えて、国内でこの治療を長く行ってきた施設からの報告では、3シーズンより4〜5シーズン続けた方のほうが終了後の効果が良好だったとされ、その施設では5年で終える方針をとっているとのことです。毎日飲むこと、目安として7〜8割以上の日で飲めていることが望まれます。

Q. いつ始められますか?

スギの舌下免疫療法は、当院では6〜11月に開始します。飛散期にあたる2〜4月は開始できません。いま症状が出ている最中には始められませんので、「今年つらかったので来年に備えたい」という方は、症状が落ち着いた6月以降にご相談ください。ダニは本来1年中いつでも始められますが、スギ花粉症も併せ持つ方はスギと同じ扱いにするのが安全です。

Q. 札幌ですが、シラカバ花粉症でも受けられますか?

受けられません。日本にある舌下免疫療法の薬は、スギとダニの2種類だけで、シラカバに対する薬は国内にありません。北海道ではシラカバが4月下旬〜6月上旬に飛散し、シラカバ花粉症の方が多いとされています。春の症状の原因がシラカバであれば、この治療の対象にはなりません。まずは何に反応しているのかをはっきりさせることが出発点になりますが、そのための検査は診療上必要と判断した場合に行うものです。

Q. ヒノキ花粉症にも効きますか?

効果は限定的です。スギとヒノキは近い植物で、スギ花粉症の方の約8割がヒノキ花粉症も持っていますが、この治療のヒノキへの効果は限られており、効かない方も多いのが実情です。治療を受けた方の半数が「ヒノキには効きが弱い」と感じているという報告もあります。

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