脳卒中後の回復、低体重は「肥満」より危険|日本人5.6万人のデータが示した意外な事実

BMI & Stroke Recovery

脳卒中後の回復、低体重は「肥満」より危険
日本人5.6万人のデータが示した意外な事実

「太っている方がリスクが高い」とは限らない——体重と脳卒中転帰の関係を内科医が解説します

「太っていると病気になりやすい」というのは事実ですが、脳卒中を発症した後の回復については、話が少し違います。国立循環器病研究センターの研究グループが日本人の脳卒中患者5万6,000人以上を分析したところ、やせ型(低体重)の方が、肥満の方よりも転帰不良のリスクが高かったという結果が報告されました(International Journal of Stroke 2024)。

「肥満パラドックス」とは何か

医学の世界では「Obesity paradox(肥満パラドックス)」という現象が知られています。肥満は生活習慣病のリスクを高める一方で、心臓病や脳卒中を発症したの回復という点では、ある程度体重がある方が有利に働くことがある——という逆説的な現象です。

今回の研究は、日本人でもこのパラドックスが成立するかどうかを、日本脳卒中データバンク(JSDB)の2006〜2022年のデータで検証したものです。欧米に比べて肥満者が少なく、高齢化も進む日本人集団での検討として注目されます。

日本人5.6万人のデータで見えたこと

■ 研究のポイント(International Journal of Stroke 2024・国立循環器病研究センター)
対象:脳梗塞 4万3,668例・脳出血 9,741例・くも膜下出血 2,821例(計5万6,230例)
BMI分類:低体重(18.5未満)・正常(18.5〜23未満)・過体重(23〜25未満)・肥満I度(25〜30未満)・肥満II度(30以上)
評価:退院時の自立度(modified Rankin Scale)で「全介助・死亡」を転帰不良と定義

分析の結果、最も転帰(脳卒中後の回復度)が悪かったのは「低体重(BMI 18.5未満)」のグループでした。脳梗塞と脳出血を合わせると、正常体重と比べて転帰不良のリスクが約1.4〜2.3倍高いことが示されました。

さらに興味深いのは、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化が原因の脳梗塞)において、リスクが「U字型」になっていた点です。低体重も高度肥満(BMI 30以上)も転帰が悪く、正常体重付近が最も回復しやすいという結果でした。

高齢者では「少し太め」が保護的に働く

80歳以上の高齢者に限定して分析すると、軽度肥満(BMI 25〜30)の方が脳梗塞後の転帰不良リスクが約17%低くなることが示されました。肥満パラドックスが高齢者で特に顕著に現れる結果です。

なぜでしょうか。若い人では体脂肪が多いこと自体が血管へのリスクになりますが、高齢者では筋肉量・体力・免疫機能・栄養状態の「余力」として、ある程度の体脂肪が回復力を支えている可能性があると考えられています。また、やせている高齢者は栄養不良や筋肉量の低下(サルコペニア)を伴っていることが多く、これが回復を妨げる要因になっている可能性もあります。

体重管理の目標は年齢によって変わる

この研究では「高齢の脳卒中患者における体重管理の目標は、BMI 25を基準にすると適切かもしれない」と述べられています。一般的に若い世代ではBMI 22〜25が目標とされますが、高齢になるほど少し余裕を持った体重管理が望ましい可能性があります(本研究では特に80歳以上でその傾向が示されています)。

  • 若い世代:BMI 22〜25を目安に標準体重を維持する
  • 高齢者(特に80歳以上):BMI 25前後を目安に、やせすぎを防ぐことも重要
  • どの年齢でも:高度肥満(BMI 30以上)はアテローム血栓性脳梗塞の転帰に不利
  • 「食が細くなった・体重が落ちてきた」高齢者:早めの栄養管理・受診を

脳卒中予防のための体重管理

脳卒中を「起こさない」ための体重管理と、「起こした後に回復しやすい」体重管理は、年齢によってやや目標が変わります。共通しているのは、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった動脈硬化の原因をコントロールすることの重要性です。特にアテローム血栓性脳梗塞は脂質異常症との関連が強く、コレステロール管理が予防の柱となります。

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