フォシーガ・ジャディアンスを飲んでいる方へ──脱水は夏だけじゃない、冬の脳梗塞リスクも

SGLT2 Inhibitors: Dehydration Peaks in Both Summer and Winter

フォシーガ・ジャディアンスを飲んでいる方へ──脱水は冬にも増える

夏だけの問題ではありませんでした。冬の脱水と脳梗塞リスクを解説します

SGLT2阻害薬とはどんな薬か

SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を抑えることで、余分な糖を尿と一緒に体外に排出するタイプの糖尿病薬です。日本で処方されているものには、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、イプラグリフロジン(スーグラ)、カナグリフロジン(カナグル)、ルセオグリフロジン(ルセフィ)、トホグリフロジン(デベルザ)などがあります。

血糖を下げる効果に加え、体重の減少・心臓や腎臓を守る働きも確認されており、近年は糖尿病の治療だけでなく、心不全や慢性腎臓病にも幅広く使われています。

ただし、糖を尿と一緒に出す仕組み上、水分も同時に失われやすくなるという副作用があります。特に「脱水症」については注意が必要と添付文書にも記載されています。

「夏の脱水は当然として…冬も?」という発見

岐阜薬科大学の研究チームは、日本の医薬品副作用データベース(JADER)から2014年〜2023年のデータを使い、国内で販売されているSGLT2阻害薬6剤の副作用報告を月ごとに解析しました。

脱水症・脳梗塞・ケトアシドーシス・尿路感染症の報告比(RR)を月ごとに算出したところ、脱水症のRRが夏(7〜8月)に高いだけでなく、冬(12〜2月)にも高くなる「二峰性」を示したのです。

この結果は2024年に科学誌Scientific Reportsに発表されました。

月ごとの副作用報告比(RR)のパターン

・脱水症:7月が最高、8月が次点。しかし12月・1月・2月も高値 → 二峰性
・脳梗塞:2月が最高、7月が次点 → 冬がより危険
・全ケトアシドーシス:年間を通じて大きな変動なし
・尿路感染症:8月・1月・2月にやや高い

※RR(Reporting Ratio)は「その薬剤で特定の副作用が報告される割合が、他の薬全体と比べて高いかどうか」を示す指標

なぜ冬にも脱水症が増えるのか?

「汗をかく夏に脱水症が多い」のは直感的にわかります。では、なぜ冬にも?

実はこれにはいくつかの理由が考えられます:

① 「のどが渇かない」から水を飲まない

冬は寒いため、汗をかかず、のどの渇きを感じにくくなります。その結果、「水分補給を忘れる」状況が夏より起きやすくなります。特に高齢の方は、もともとのどの渇きの感覚が鈍くなっているため、さらにリスクが高まります。

② 暖房による乾燥

室内の暖房は空気を乾燥させます。乾燥した空気の中では、皮膚・気道から水分が常に蒸発しています(不感蒸泄)。この水分損失は目に見えないため見落とされがちです。

③ 冬は体内の水分量が少ない

研究によれば、高齢者では血漿浸透圧(血液の濃さを示す指標)が春に最も高くなり、冬の水分量がそもそも少ない傾向があるとの報告もあります。SGLT2阻害薬で尿に水分を出し続けている状態に、この冬の「体内水分少なめ」という状況が重なると、脱水が進みやすくなります。

冬の脱水が怖い理由:気づきにくい

夏の脱水は「暑い」「汗をかいた」「のどが渇いた」という自覚があります。しかし冬の脱水は、これらのサインがないため気づきにくいのです。気づいたときには血液が濃縮されており、血栓が形成されやすい状態になっています。これが脳梗塞リスクの上昇につながります。

冬に脳梗塞リスクが最も高かった

今回の研究で特に注目すべきは、脳梗塞の報告比が2月に最も高くなっていた点です。

冬は低温により血管が収縮しやすく、もともと脳梗塞が増える季節です。そこにSGLT2阻害薬による脱水による血液の濃縮が加わると、血栓が形成されやすい状態が重なります。SGLT2阻害薬を飲んでいる方にとって、冬の水分管理は「命に関わる問題」と捉えてください。

SGLT2阻害薬を飲んでいる方が冬にやるべきこと

冬の水分補給チェックリスト(SGLT2阻害薬服用中の方へ)

・「のどが渇かなくても」、1〜2時間ごとにコップ1杯(150〜200mL)を飲む
・朝起きたらまず水または白湯を1杯飲む(就寝中に失った水分を補給)
・暖房が効いた部屋では特に積極的に補給する
・アルコールは利尿作用で水分を奪うため、飲み過ぎに注意
・尿の色が濃い黄色・茶色になったら脱水のサイン。すぐに水を飲む
・立ちくらみ・頭痛・口の中が渇く感じが続くときは受診する

他の副作用(ケトアシドーシス)は季節変動なし

SGLT2阻害薬のもう一つの重要な副作用として「正常血糖ケトアシドーシス(euDKA)」があります。これは血糖が正常値でもケトアシドーシスが起きる、気づきにくいリスクです。今回の研究では、ケトアシドーシスのリスクには明確な季節変動は見られませんでした。

つまり、ケトアシドーシスは一年中注意が必要、脱水症は特に夏と冬が注意、という使い分けになります。

SGLT2阻害薬を使っている方へのまとめ

  • 脱水症は夏(7〜8月)だけでなく、冬(12〜2月)にも増加する
  • 冬は脳梗塞リスクも最も高くなる(2月がピーク)
  • 「のどが渇かない冬こそ、意識的に水を飲む」習慣を
  • 立ちくらみ・口の渇き・濃い尿色は脱水のサイン
  • ケトアシドーシスは季節に関係なく通年で注意が必要

糖尿病の薬の選択や管理については糖尿病外来のページ、また体重管理のためにSGLT2阻害薬を使いたい方はメディカルダイエット外来もご参照ください。

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