LDL Cholesterol — How Low?
悪玉コレステロールは「低いほど良い」?
再発予防の新しい研究を内科医が解説
心筋梗塞や脳梗塞を経験した人で、悪玉コレステロールをより低く保ったグループのほうが再発が少なかった、という研究が報告されました(NEJM 2026年・韓国)。一方で、まだわかっていないことも残っています。
「コレステロールは、どこまで下げればいいのでしょうか?」──これは専門家の間でも長く議論されてきたテーマです。2026年、心筋梗塞や脳梗塞などを経験した人を対象に、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の目標をより厳しくした場合の効果を調べた研究が、医学雑誌 NEJM に報告されました。
悪玉コレステロールは低いほど良いの?
近年、心臓や血管の病気を「再発」させないための治療では、「LDLコレステロールは低いほど、心臓や血管の事故が起きにくい」という考え方が広がってきました。今回の韓国の研究(Ez-PAVE)は、この考え方を実際に検証したものです。
心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・足の動脈の病気などを経験した約3,000人を、2つのグループに分けて約3年間追跡しました。
| グループ | めざしたLDLの目標 | 再発などの起こりやすさ |
|---|---|---|
| より厳しく下げた群 | 55未満(実際は平均56ほど) | 約3割少なかった |
| 従来の目標の群 | 70未満(実際は平均66ほど) | 基準 |
NEJM 2026年掲載の Ez-PAVE 試験より。数値の単位は mg/dL。再発などには、心臓や血管の事故・再びの治療・入院が含まれます。
つまり、より低い目標まで下げたグループのほうが、その後の心臓や血管のトラブルが約3割少なかったという結果です。重い副作用は両グループで大きな差はありませんでした。
そもそもLDLコレステロールとは?
LDLコレステロール(悪玉)は、血液中のコレステロールを全身へ運ぶ「配達役」です。多すぎると血管の壁にたまり、動脈硬化(血管が硬く狭くなる変化)の材料になります。これが進むと、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。
治療には大きく2つの考え方があります。まだ発作を起こしていない人の「初めての発作を防ぐ」のが一次予防、すでに心筋梗塞や脳梗塞などを経験した人の「再発を防ぐ」のが二次予防です。今回の研究は再発予防(二次予防)の話で、一般の方すべてに当てはまるものではありません。
「55」「70」という数字をどう受け止める?
再発予防の目標として、国や状況によって「100」「70」「55」といった数字が使われています。欧州ではすでに、再発予防で55未満という厳しめの目標が示されています。日本では現在、リスクの高い方で70未満が一つの目安とされており、今回のような研究を受けて、将来さらに引き下げるべきか議論されている段階です。
⚠️ 大切な注意:
この記事は一般的な情報で、特定の方に「目標を55にすべき」とおすすめするものではありません。どこまで下げるか、どの薬を使うかは、年齢・既往・副作用・ほかの薬との兼ね合いをみて、主治医が一人ひとり個別に判断します。自己判断で薬を増減しないでください。
まだわかっていないこと(両面から)
有望な結果ですが、注意すべき点も残っています。
- 女性では効果がはっきりしなかった:参加者の多くが男性(約8割)で、女性での最適な目標は今後の課題です。
- 追跡は約3年と短め:より長期の効果や、命そのものを延ばすかは、まだ確かめられていません。
- 主に韓国の男性の結果:日本人にそのまま当てはまるかは慎重にみる必要があります。
- どの薬で下げるかは未決着:複数の薬の選択肢があり、「誰に、どうやって下げるか」はこれからの研究テーマです。
医師より
「低いほど良い」という流れは確かにありますが、それは“すでに発作を経験した方の再発予防”という限られた場面の話です。しかも今回は男性中心の結果でした。大切なのは数字を一人歩きさせないこと。あなたにとっての適切な目標は、これまでの経過や体質をふまえて決めるものです。コレステロールの治療は、定期的な血液検査で効果と安全性(肝機能など)を確認しながら、じっくり続けていくものだとお考えください。
まとめ
心筋梗塞や脳梗塞を経験した人では、悪玉コレステロールをより低く保ったグループのほうが再発が約3割少なかった、という研究が報告されました。ただし女性での効果は不明で、追跡期間も短いなど、これからの課題も残っています。コレステロールの治療目標は、検査値をもとに主治医が個別に判断します。なお、脂質の治療は定期的な採血が欠かせないため、オンラインだけで完結する治療には向きません。
当院では、脂質異常症(コレステロール)の診療を行っています。健診で数値を指摘された方も、すでに治療中の方も、お気軽にご相談ください。
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ゆうしん内科クリニック(札幌市中央区南20条西16丁目2-1)
よくある質問
LDLコレステロールは、低いほどいいのですか?
再発予防では「低いほど心臓・血管の事故が起きにくい」という傾向が報告されています。ただし、どこまで下げるか、誰にでも55が正しいかは研究途上で、今回の研究も男性中心の結果でした。自己判断で下げすぎを目指すより、検査値をもとに主治医と決めるのが安全です。
薬を増やしたほうがいいのでしょうか?
今回の研究は「薬を足してより下げたグループで再発が約3割少なかった」という内容ですが、増やすかどうかは年齢・既往・副作用・ほかの薬との兼ね合いで個別に判断します。気になる方は、今の数値を持ってご相談ください。
女性はどうなのですか?
今回の研究では、女性での明確な効果は示されませんでした。女性の参加者が少なかったためで、「効かない」と断定もできません。女性での最適な目標値は、今後の課題です。
