水を飲まない人は老化が早い──血液検査でわかる「水分不足のサイン」と長寿の関係

Drink Less, Age Faster? What 25 Years of Data Revealed

水を飲まない人は老化が早い──血液検査でわかる「水分不足のサイン」

25年間の追跡研究が示した衝撃の結論。あの血液検査の数値が水分不足のサインです

「水をよく飲む人は長生き」は本当か?

「水をたくさん飲むと健康によい」という話はよく聞きますが、実際に長寿や老化に関係するのでしょうか。動物実験では、水分摂取を制限したマウスで寿命が短くなることが確認されています。しかし、人間のデータで「水を飲まないと老化が早まり、早く死ぬ」という因果関係を証明するのは難しい——そう思われてきました。

米国国立心肺血液研究所(NHLBI)のDmitrieva氏らは2023年、この問いに真剣に向き合った観察研究の結果をEBioMedicine誌に発表しました。25年以上にわたる大規模追跡データを使ったこの研究は、水分補給の習慣と老化・寿命の関係について、これまでで最も丁寧に検討したものの一つです。

血清ナトリウム値で「水分補給の習慣」を測る

この研究の賢いところは、「どれだけ水を飲んでいるか」を直接聞くのではなく、血液検査の血清ナトリウム(Na)値を代用マーカーとして使った点です。

血清Na値は、血液中のナトリウムの濃度です。体内の水分量が減ると血液が「濃く」なり、血清Naが上がります。逆に水分が十分あれば血液は適度に薄まり、血清Naは正常範囲(135〜146 mEq/L)に収まります。

つまり「血清Naが高めの人=日頃から水分が足りていない人」と考えることができます。これは健康診断で誰でも確認できる数値です。

研究の概要:45〜66歳を25年以上追跡

研究が使ったのは米国の「ARICコホート」(Atherosclerosis Risk in Communities study)。1987〜89年に登録した45〜66歳の米国人約1万5,000人を25年以上追跡した大規模前向き研究です。

今回の解析では、高血糖・高度肥満など血清Naに影響する可能性がある方を除いた、1万1,255人のデータを使いました。ベースライン(1990〜92年、平均年齢57歳)から最終追跡(2011〜13年、平均年齢76歳)まで約20年間のデータです。

研究結果:数値で見る水分不足と健康リスク

中年期(平均57歳時)の血清Na値が高い人ほど、その後の健康リスクが上がることが明らかになりました:

血清Na 142 mEq/L超:慢性疾患(心臓病・脳卒中・肺疾患・骨折・認知症など)の発症リスクが約4割増
血清Na 144 mEq/L超:早期死亡リスクが約2割増
血清Na 142 mEq/L超:生物学的年齢が暦年齢より高い(老化が進んでいる)可能性が約1.5倍

「生物学的年齢」とは何か?

研究では「老化の進み具合」を評価するために、「生物学的年齢(biological age)」という指標を使いました。これは実際の年齢(暦年齢)ではなく、体の状態から計算した「身体的な年齢」です。

例えば、暦年齢は60歳でも、血液・血圧・腎機能・肺機能などの指標が65歳レベルなら、生物学的年齢は65歳と評価されます。

今回の研究では、中年期に血清Naが142 mEq/L超だった人は、暦年齢よりも生物学的年齢が高い傾向があったのです。水分補給の不足が、文字通り「体の老化を早める」ことを示唆するデータです。

142 mEq/Lという閾値(しきいち)を意識する

ここで大切なのは、「血清Naが正常範囲だから安心」ではないということです。通常の基準値は135〜146 mEq/Lですが、今回の研究では142 mEq/Lを超えたあたりからリスクが高まるという結果が出ています。

健康診断の血液検査で「Na 141」と書かれていても正常範囲内ですが、研究の観点からは「水分があと少し足りているとよい」と解釈することができます。

健康診断で血清Na値を確認しよう

「電解質」や「Na」という項目として記載されています。正常範囲(135〜146)内でも、142以上であれば日頃の水分補給を見直すサインとして意識してみてください。もちろん、脱水以外にも血清Naが上がる病気(腎臓病・内分泌疾患など)がありますので、持続的に高い場合は医師に相談を。

観察研究の限界と、それでも「水を飲む」理由

もちろん、この研究には限界があります。「水を飲まない人=もともと不健康な生活をしていた」という交絡因子の存在が否定できないこと、「水分を増やしたら本当に長生きになるか」を証明したわけではないこと——研究者自身もこれを認めています。

ただし、研究グループは「25年間の追跡という長期データで一貫した関連が見られたこと、マウス実験でも水分制限が寿命を縮めることが示されていることを考えると、今回の知見は水分補給の重要性を支持するものだ」と述べています。

費用ゼロ、副作用ゼロ、毎日できる健康習慣として「こまめに水を飲む」は、コストゼロで実践できる最もシンプルな老化予防です。

中年期からの水分補給チェックポイント

  • 尿の色が薄くなるよう水分摂取を調整する(必要量は体格・活動量・気温によって異なる)
  • 水・麦茶・薄めのお茶をメインに。砂糖入り飲料・アルコールは逆に脱水を招く
  • 「渇いてから飲む」ではなく、時間を決めてこまめに飲む習慣を
  • 健康診断で血清Na値が142以上なら、日常的な水分摂取量を増やすサイン
  • 食欲のない日も、汁物・スープ・ゼリー飲料などで水分を補う

血圧や血液検査の結果が気になる方、生活習慣の改善についてご相談したい方は高血圧外来のページもご参照ください。

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