GLP-1 Medications & Hair Loss
マンジャロ・ウゴービで
抜け毛が起きるって本当?
発生率・原因・予防法を、データをもとに正直にお伝えします
「マンジャロを始めてから、なんとなく抜け毛が増えた気がする……」
「ウゴービで痩せたはいいけど、髪がいつもより抜ける?」
最近、こんな声を患者さんからよく聞くようになりました。
結論から言います。医療ダイエット注射(マンジャロ・ウゴービなど)で抜け毛が増えることは、大規模な研究で確認されています。ただし、「なぜ起きるのか」については、まだはっきり分かっていない部分もあります。怖がらせるためではなく、データを正直にお伝えしたいと思います。
抜け毛の報告は本当にある——数字で見てみましょう
「気のせい」や「個人差」ではなく、研究でしっかり確認されています。
マンジャロ(チルゼパチド)
5〜6%
使った人の約18人に1人で報告
(薬なしのグループは約1%)
ウゴービ・オゼンピック(セマグルチド)
7%
使った人の約14人に1人で報告
(薬なしのグループは約3%)
これは1年〜1年半にわたる大規模な研究でのデータです(2025年4月、カナダのトロント大学などが複数の研究をまとめた論文より)。
大切なポイント:使った人の9割以上には抜け毛の増加は起きていません。そして、薬を使っていない人の中にも数%は脱毛が起きています。「薬を使えば必ず抜ける」わけでは全くありません。
なぜ抜け毛が起きるの?「薬が悪い」より「急激に痩せることが問題」の可能性
ここが一番大事な話です。
有力な説(研究から強く示唆・ただし完全には証明されていません)
食欲が落ちる → 食べる量・カロリーが急激に減る → 鉄・亜鉛・タンパク質などの栄養素が不足する → 体が毛根への栄養を後回しにする → 抜け毛が増える
根拠となるデータが複数あります。
- ウゴービの研究で、体重が20%以上減った人は20%未満の人と比べて抜け毛が約2倍起きやすかった
- マンジャロによる脱毛リスクは、胃の縮小手術後の脱毛と同程度(研究で確認)。手術後の脱毛も急激な食事制限が原因とされている
- 体重減少が落ち着いてくると、抜け毛も自然に回復する傾向がある
つまり、「薬が悪い」というより「急激に痩せることが悪い」可能性が高いのです。これは、やりすぎたダイエットや過酷なスポーツ(エネルギー不足で体を追い込んだ状態)で抜け毛が起きることと、同じメカニズムと考えられています。
「薬そのものが毛根に作用している」という説もあるが——
「いや、薬が直接の原因では?」という可能性も完全には否定されていません。マウスを使った実験で、毛根の周囲にマンジャロ・ウゴービと同じ受容体(薬に反応する部位)が見つかっています。薬がこの部位を通じて毛根のサイクルに何らかの影響を与えている——という仮説です。
ただし、これはマウスの実験の話であり、人間では確認されていません。現時点では「仮説」のひとつです。
どんな抜け毛?ずっと続くわけではありません
報告されているのは主に、「体のストレスが原因で一時的に髪が抜けやすくなる状態」です。具体的には以下のような特徴があります。
- 頭全体からまんべんなく抜ける(一部だけハゲるのではない)
- 毛根が壊れているわけではなく、原因が解消されれば回復する
- 体重の減少が落ち着いてから、多くの場合5ヶ月前後で自然に戻ったという研究報告がある
- 薬を続けていても、体重が安定してくると落ち着くことがある
「永久に禿げる」わけではありません。現時点の研究では、これらの薬による脱毛が永続的な薄毛につながったという証拠は見つかっていません。研究で確認済み
抜け毛を防ぐために今日からできること
① 急がない・ゆっくり増量する
マンジャロ・ウゴービは最初は少ない量から始めて、徐々に増やしていく薬です。この「ゆっくり」が急激なカロリー不足を防ぎます。早く結果を出したい気持ちは分かりますが、急ぎすぎると抜け毛リスクが上がります。
② タンパク質を意識して摂る
食欲が落ちると、一番削られやすいのがタンパク質です。髪の主成分はタンパク質ですから、食欲がなくても肉・魚・卵・大豆製品を毎食に入れるようにしてください。目安は体重1kgあたり1.2〜1.6g(体重60kgなら1日72〜96g)です。
③ 鉄・亜鉛の不足に気をつける
食事量が減ると、鉄や亜鉛も不足しやすくなります。これらは毛根に欠かせない栄養素です。血液検査でフェリチン(鉄の貯蔵量)や亜鉛の値を定期的に確認することをお勧めします。
④ サプリメントについて
「髪に効く」と言われるビオチン(ビタミンB7)サプリは、今回のような急激な減量による一時的な抜け毛には効果があるという証拠がまだありません。サプリを使いたい場合は、自己判断ではなく主治医に相談してください。
医師のひとこと:正直に言うと、まだ分からないことが多い
研究で確認済みはっきり分かっていること
- マンジャロ・ウゴービで抜け毛が増えることがある
- 体重をたくさん落とした人ほど起きやすい
- 多くの場合は一時的で、体重が安定すると回復する
まだはっきり分かっていないこと
- 薬が直接毛根に作用しているのか、それとも急激な減量による栄養不足が原因なのか
- 薬を始めてから抜け毛が出るまでの期間(個人差が大きく、データが少ない)
- 男性型の薄毛(AGA)との関係(一部の研究でリスク上昇の報告あり、要研究)
最後に、私個人の考えをひとつお伝えします。ただし、これはあくまでも私の仮説であり、現在の研究では確認されていません。
急激な体重減少は、髪よりも先に女性の「生理」に影響することがあります。スポーツのやりすぎで生理が止まるアスリートと、全く同じメカニズムです(どちらも「エネルギー不足のサインを脳が感じて生理を止める」ことで起きます)。もしかすると、抜け毛が目立ち始める前に、生理の変化(周期が乱れる・量が減る・止まる)が先にサインとして現れているかもしれません。
繰り返しますが、これは研究で証明されていない私の予想です。ただ、もしマンジャロ・ウゴービを使っていて生理に変化があった場合は、「急ぎすぎているサインかもしれない」と受け止め、すぐに主治医にご相談ください。
この記事のまとめ
- マンジャロ・ウゴービで抜け毛が起きることは研究で確認されており、使った人の5〜7%で報告されている(9割以上は起きていない)
- 原因として最も有力なのは「急激な栄養・カロリー不足」。薬そのものが直接の原因かどうかはまだ不明
- 多くの場合は一時的で、体重が安定すると回復する
- 対策は「ゆっくり増量」「タンパク質の確保」「鉄・亜鉛の定期確認」
- 【私の仮説・未証明】女性の場合、生理の変化が抜け毛より先に現れるサインになるかもしれない
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