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医療でサポートする肥満治療 ~ウゴービ活用の最新エビデンス
■ウゴービとは
ウゴービ(Wegovy)はインスリン分泌促進ホルモン(GLP-1)受容体作動薬に属する、週1回の自己注射薬で、カロリー制限と運動を併用した慢性の体重管理に用いられます。もともとは2型糖尿病治療薬として開発されましたが、肥満症治療でも高い効果を示します。ウゴービは摂食中枢に働きかけて食欲を抑制するとともに、胃排出を遅延させて満腹感を高め、長期的な体重減少につなげます。主な臨床試験(STEP試験シリーズ)で示された効果は次の通りです:
STEP 1試験(NEJM 2021):週1回ウゴービ2.4mg投与群は、68週時点で体重が平均14.9%減少(対照群2.4%減)し、治療群と対照群の体重差は-12.4%(約-12.7kg)でした。また、50.5%が15%以上の体重減少を達成し、心血管リスク因子や身体機能も改善されました。
STEP 3試験(JAMA 2021):集中的な食事療法・運動療法下でウゴービ2.4mg投与群は、68週で体重が平均16.0%減少し、対照群の5.7%減に対して有意に優れていました。治療群の75.3%が10%以上、55.8%が15%以上の体重減少を達成しています。
これらの結果から、ウゴービは食事・運動療法だけでは難しい体重管理を大きく補助し、持続的かつ臨床的に有意な減量効果をもたらすことが示されています。
肥満治療ではまず食事療法と運動療法を徹底することが基本です。これらの生活習慣療法を十分に行っても効果が乏しい場合に、ウゴービを含む薬物療法が検討されます。ウゴービ投与中も食事・運動療法の継続が重要です。
■副作用
ウゴービの副作用として最も多いのは消化器症状で、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などがあります。これらは通常一時的で軽度~中等度であり、時間とともに軽減することが多いです。主な副作用(発現率5%以上)には以下が含まれます:
吐き気・嘔吐、下痢、便秘、腹痛
頭痛、倦怠感、めまい
食欲低下
(糖尿病患者では)低血糖(インスリンやインスリン分泌促進薬との併用時)
また、用量は0.25→0.5→1.0→1.7→2.4mgと4週ごとに段階的に増量するため、初期に吐き気が出やすい点に注意が必要です。まれに胆石症や膵炎が報告されており、激しい腹痛が起こった場合は速やかに専門医療機関の受診が必要となります。なお、甲状腺髄様がん(MEN2)の既往がある患者には禁忌です。
■処方基準と施設要件
ウゴービは肥満症治療薬で適応は、
「BMI ≧ 35 kg/m²」
または
「BMI ≧ 27 kg/m²かつ肥満関連合併症を2つ以上有する場合」
に限定されています。肥満関連合併症には高血圧、脂質異常症、耐糖能異常(2型糖尿病)などが含まれます(例:BMI 27以上で高血圧と脂質異常症を有する患者)。ただし日本では、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインにより、以下の条件を満たす施設でのみ保険診療が可能とされています:
専門医常勤・教育研修施設:内科・循環器科・内分泌科・代謝内科・糖尿病内科のいずれかを標榜し、関連学会の専門医が常勤し、学会認定の教育研修施設であること。
管理栄養士による栄養指導:常勤の管理栄養士が配置され、診療記録を残す形で適切な栄養指導が行える体制であること。
生活習慣療法の実施:投与前に施設内で6ヶ月以上、2ヶ月に1回以上の栄養指導を含む食事・運動療法を継続しても十分な効果が得られなかった患者に限定すること。
これらの要件はGLP-1製剤乱用防止の観点から設定されたもので、実際には大学病院等の大規模施設に限られます。また、保険診療でウゴービを使用する場合、自己負担より低コストですが頻繁な通院・検査・指導が義務付けられます。
導入当初1年間は最大2週間分の処方のみ許可され、2週間ごとの受診が必須です(毎回の診察と血液検査が必要) 。
その後(導入1年以降)、も体調や副作用確認のために定期的な受診が継続的に求められます 。
加えて、投薬前の半年間は必ず月1回以上医師診察、さらに2ヶ月ごとに管理栄養士による栄養指導が必要です 。
これらの条件のため多くのクリニックでは保険適用が難しく、当院ではウゴービは自費診療での提供となっています。
■海外の適応基準
米国FDAの添付文書によるとウゴービの適応は
- 12歳以上のObesity(BMI ≧ 30 kg/m²)
- Overweight(BMI ≧ 27 kg/m²)かつ1つ以上の体重関連合併症(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症など)
- 既に心血管疾患を有し、かつOverweight(BMI ≧ 27 kg/m²)のある成人
とされており、施設要件や長期的な栄養指導の要件は日本と違い規定されていません。このように海外では医師の裁量で処方が行われ、日本のような厳格な施設基準がないため、ウゴービの導入ハードルは比較的低くなっています。
■自由診療でのウゴービ処方について
当院では上記の施設基準を満たしていないため、ウゴービの処方は自由診療となります。
※(顔写真付き身分証明書+健康保険証)もしくは(マイナンバーカード)をご持参ください
(顔写真のない身分証明書は無効です。また、生活保護を受けている方への診療は行っておりません)
- ウゴービは肥満症に対してのみ処方可能です
- 美容目的の処方は行っておりません
- 0.25mgより開始となります
- 用量を増やす場合は4週毎となります
料金(税込) | |
ウゴービ皮下注 0.25mg (4本) | 16,000円 |
ウゴービ皮下注 0.5mg (4本) | 24,000円 |
ウゴービ皮下注 1.0mg (4本) | 36,000円 |
ウゴービ皮下注 1.7mg (4本) | 44,000円 |
ウゴービ皮下注 2.4mg (4本) | 60,000円 |
※製品の性質上、返品は一切不可です。ご了承ください。
- ウゴービ
主成分:セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)
作用機序:脳の食欲中枢に働きかけて強力に食欲を抑制し、さらに胃排出を遅らせることで自然と食事量を調整できる。
投与方法:週1回の皮下注射
体重減少効果:平均14〜15%と、現存ダイエット薬の中で最大級 - リベルサス
成分/作用:同じくGLP-1作動薬だが経口薬
投与方法:毎朝内服(空腹時)
体重減少効果:平均6〜8%。注射が苦手な人に向くが、ウゴービより効果はやや控えめ - サノレックス
成分/作用:中枢神経刺激による食欲抑制
投与方法:毎日内服(最長3ヶ月)
体重減少効果:平均5〜7%。即効性はあるが、依存性や精神的副作用リスク、長期使用不可 - オゼンピック
成分/作用:セマグルチド(GLP-1作動薬)、主に糖尿病治療薬として承認
体重減少効果:最大7〜10%程度。ウゴービより投与量が低く抑えられている - マンジャロ
主成分:チルゼパチド(GLP-1+GIPデュアル作動薬)
体重減少効果:20%以上と、現時点で最強クラスとされる。作用機序も複合的
糖尿病治療薬のため、糖尿病のない方に適応はない - オルリスタット(ゼニカルなど)
作用機序:脂肪の吸収を抑制
体重減少効果:平均3〜5%。副作用は脂肪便・下痢など消化器症状が目立つ - 漢方薬(防風通聖散など)
作用:体質改善・代謝向上・便通調整
体重変化:個人差が大きいが、比較的副作用は少ない
- 脳(中枢)への作用
視床下部の「満腹中枢」に直接作用して食欲を強力に抑制します。これにより自発的に食事量が減り、無理な我慢なしに摂取カロリーを抑えることができます - 胃への作用
胃の蠕動運動を抑えて胃内容物の排出を遅らせる(=胃に物が長く留まる)。このため満腹感が長時間持続し、食べ過ぎや間食が減りやすくなります - 血糖への作用
食後の高血糖時に膵臓インスリン分泌を高め、血糖上昇を抑制します。同時にグルカゴン(血糖上昇ホルモン)分泌も抑え、脂肪蓄積が抑えられる傾向になります。ただし体重減少への主効果は「食欲抑制」と「満腹感持続」です - その他の可能性
一部の専門解説では、GLP-1受容体作動薬が白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への変化を促し基礎代謝向上をサポートする可能性も指摘されていますが、主な作用はやはり中枢の食欲制御と満腹感の持続です総じて、Wegovyは「生理的な満腹感」を高めて食欲を自然に抑え、さらに胃の働きを遅くすることで「少量で十分満足」できる体質へと変化させるのが減量メカニズムの特徴です
ウゴービの最大投与量は週1回あたり2.4mgです。この最大投与量まで段階的に増量し、維持することで「平均して体重の約13~15%の減量効果」が臨床試験で認められています。例えば体重100kgの人なら、およそ13kg~15kgの減量が見込めることになります
- 最大投与量の根拠
医薬品添付文書上、ウゴービは0.25mgから開始し数週間ごとに増量、最終的に2.4mg(維持用量)へ到達した上で効果を評価する運用が標準とされていま - 効果の詳細(臨床試験)
STEP試験(国際大規模臨床)にて、2.4mg投与で平均13~15%の減量という、他のダイエット薬を大きく上回る結果でこの効果は、食事・運動療法と併用することで最大化されます - 投与量と効果の関係
セマグルチド(ウゴービの主成分)は投与量が高くなるほど、食欲抑制・満腹感持続・胃排出抑制作用が強まります。最大投与量2.4mgを維持することで、多くの場合で「有意な体重減少」が持続的に得られやすくなります - 注意点(副作用と増量方法)
副作用(吐き気や胃腸症状など)が出やすくなるため、いきなり最大量にはせず4週間ごとに段階増量します。1~4週目0.25mg、5~8週目0.5mg、以降1.0mg→1.7mg→2.4mgと増量し、17週目以降は2.4mgで維持が標準です。副作用や効果に応じて調整される場合もあります
ウゴービ(セマグルチド)と併用禁忌となる抗うつ薬や抗精神病薬は現時点で存在しません。FDA(米国食品医薬品局)の最新添付文書では、セマグルチドと抗うつ薬・抗精神病薬との明確な禁忌や重大な薬物相互作用は記載されていません。また、臨床試験や大規模薬剤疫学データでも、抗うつ薬や抗精神病薬との併用による重篤な有害事象や禁忌は報告されていません。
ウゴービによる脱毛のリスクと頻度は、臨床試験および米国FDAの添付文書において「3%程度」と報告されています。これはプラセボ群(1%)より高い頻度ですが、同系統の薬であるマンジャロの約5%と比較するとやや低い傾向です。
脱毛の副作用は永続的ではなく、通常は「一過性(一時的)」かつ「軽度から中等度」であると報告されています。臨床試験および米国FDAの添付文書によれば、これらの薬剤による脱毛は主に治療初期や体重減少が顕著な時期に発生し、重篤な持続性脱毛や不可逆的な脱毛は報告されていません。
ただし、BMIが低かったり持病が何もない方で、そもそも適応のない方が使用した場合のリスクや重症度は明らかではありません。思わぬ重篤な副作用が出現する可能性があるため、当院では適応外の処方は一切行っておりません。