睡眠時無呼吸の治療

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療には複数の選択肢があります。重症度・原因・生活スタイルに応じて最適な治療法を選択します。このページでは各治療法の特徴と、当院での対応についてご説明します。

治療の目的

SAS治療の目的は2つです。

  • 自覚症状の改善:日中の眠気・熟睡感の欠如・頭痛・集中力低下などを解消する
  • 生命予後の改善:高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病などの合併症リスクを低減する

治療が必要な条件

治療の必要性はAHI(無呼吸低呼吸指数)と症状・合併症によって判断します。

  • 軽症(AHI 5〜14):日中の眠気など明らかな自覚症状がある場合、または高血圧・心疾患などの合併症がある場合に治療を検討します。自覚症状も合併症もない単純ないびきだけの場合は、治療の優先度は低くなります。
  • 中等症以上(AHI 15以上):症状の有無に関わらず治療を推奨します。

① CPAP療法(シーパップ)

現在、世界中で最も普及しているSASの標準治療です。鼻に装着したマスクから一定の圧力で空気を送り込み、睡眠中の気道閉塞を防ぎます。その有効性・安全性は世界的に確立されています。

CPAPのメリット

  • 適切に設定されれば、ほぼ完全に気道閉塞を防ぎ無呼吸をなくすことができる
  • 日中の眠気の改善・熟睡感など、効果を自覚しやすい
  • 長期使用で心血管疾患リスクが低下し、生命予後が改善することが報告されている
  • 使用している間は確実に効果が持続する

CPAPの注意点

  • 対症療法のため、使用を継続することが大切です(やめると無呼吸が戻ります)
  • 毎晩就寝時にマスクを装着する必要があります
  • 慣れるまでに時間がかかる方もいますが、多くの方が数週間で慣れます

保険適用の基準(2026年6月改定)

検査の種類〜2026年5月2026年6月〜
簡易検査(REI)40以上30以上(緩和)
精密検査(PSG・AHI)20以上20以上(変更なし)

2026年6月の診療報酬改定により、簡易検査でのCPAP保険適用基準がAHI(REI)40以上から30以上に緩和されます。これまでグレーゾーンだった中等症の方も、より早く保険でCPAPを開始できるようになります。

CPAP継続中の通院・オンライン診療

CPAP使用が安定してくると、定期診察は短時間で済みます。当院ではCPAP継続管理をオンライン診療で対応しています。雪道の通院が大変な札幌の冬でも、自宅や職場の個室から受診できます。

出張・海外渡航が多い方へ

スマートフォンとほぼ同じ大きさのコンパクトなCPAP機器もあります。国内出張はもちろん、海外出張・旅行にも持ち運べるため、移動が多い方でも治療を継続できます。

② 口腔内装置(マウスピース)

下顎を前方に固定する装置を就寝時に装着することで、気道を広げて無呼吸を改善します。軽症〜中等症のSASに有効性が確立されています。

  • CPAPに比べると効果はやや劣りますが、装着が簡単で続けやすい
  • CPAPが合わない・継続が難しい方の代替治療として有効
  • 歯科医院での作製が必要(当院から紹介状を発行します)
  • 保険適用:AHI 5以上20未満で自覚症状がある場合など

③ 減量・生活習慣の改善

肥満はSASの最も重要な原因の一つです。体重を減らすことで気道周囲の脂肪が減り、無呼吸が改善することがあります。

  • 重症のSASを減量だけで完全に解消するのは難しいですが、CPAPと組み合わせると相乗効果が期待できます
  • 飲酒・睡眠薬の使用も上気道の筋肉を弛緩させSASを悪化させるため、できるだけ控えることが望ましいです
  • 側臥位(横向き)で寝ると仰向けより無呼吸が軽減することがあります(軽症例に有効)

当院では医療ダイエット(GLP-1治療)にも対応しています。SASと肥満を同時に管理したい方はご相談ください。

④ 外科的治療

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)など、上気道を広げる手術が選択肢になることがあります。

  • 重症例ではCPAPに比べて有効性が低いとされています
  • 軽症〜中等症でCPAPなどの継続治療が難しい患者さんには有用な場合があります
  • 小顎症・下顎後退症の方には顔面形態矯正術が有効なことがあります
  • 鼻ポリープ・鼻中隔弯曲症などによる鼻閉もSASを悪化させるため、耳鼻科的治療が有効な場合があります

⚠️ レーザー治療について

近年、いびき・SASに対するレーザー治療を行うクリニックが増えています。しかし、日本呼吸器学会の診療ガイドラインでは、SASに対するレーザー治療は効果が十分に確認されておらず推奨されていません。術後の瘢痕によってかえって気道が狭くなるリスクも報告されています。

当院でも、レーザー治療後に効果がなくCPAPを開始するために来院された患者さんが複数います。SASの治療はガイドラインに基づいた方法で行うことが重要です。

当院でのCPAP治療の流れ

  1. 診察・検査:来院またはオンライン診療で受診。簡易検査または在宅PSGを実施。
  2. 結果説明・治療開始:検査結果をもとに治療方針を決定。CPAP適応の場合は機器を貸与します。
  3. 初期調整:CPAP使用開始後、圧設定などを調整します。安定するまでは対面診療をお勧めします。
  4. 定期管理:使用が安定したらオンライン診療での継続管理も可能です。月1回の受診が基本です。

SASについて詳しく知りたい方へ