DIET & LIFESTYLE FOR DYSLIPIDEMIA
脂質異常症の食事療法
カロリー管理が最も大切な理由
「何を食べてよいか・悪いか」よりも大切なことがあります
減量と減薬の好循環をつくるための考え方を解説します
脂質異常症の食事療法で最も大切なこと|総摂取カロリーの管理
脂質異常症の食事療法というと、「卵を控える」「揚げ物を避ける」「肉より魚を食べる」といった食品の取捨選択が思い浮かぶかもしれません。もちろんこれらも一定の意味がありますが、当院が最も重視しているのは1日の総摂取カロリーを適正に管理することです。
どれだけ「身体に良い」とされる食品を選んでも、食べすぎてカロリーオーバーになれば脂質の数値は改善しません。逆に、特別な食品を選ばなくても、総カロリーを抑えて体重が減れば、LDLコレステロールも中性脂肪も改善する方がほとんどです。
脂質異常症の治療における理想的なサイクルは、カロリーを減らす→体重が落ちる→数値が改善する→薬が減るという好循環をつくることです。このサイクルを回すための出発点は「何を食べるか」ではなく「どれだけ食べるか」の管理なのです。
適正カロリーの目安|まず自分の「食べすぎ」を知る
脂質異常症の食事療法における適正エネルギー量は、標準体重×身体活動量で計算します。標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で算出し、身体活動量はデスクワーク中心の方で25〜30 kcal/kg、肉体労働の方で30〜35 kcal/kgが目安です。
たとえば身長170cmの方の標準体重は約63.6kgで、デスクワーク中心であれば1日の適正カロリーは約1,590〜1,900 kcalとなります。普段の食事量がこれを大幅に超えていないか、まず把握することが第一歩です。細かい食品の選別よりも、毎日の食事量全体を見直すことが、結果的に最も確実な脂質改善につながります。
脂質異常症の食事でよくある誤解と正しい知識
「油=コレステロール上昇」は正確ではない
「コレステロールが高い=脂っこい物の食べすぎ」と信じている方は非常に多いのですが、これは医学的に正確ではありません。人間の身体にはコレステロールのバランスを調整する仕組みが備わっています。食事から摂るコレステロールの量が増えると、体内での合成量が減少して調整されるため、食事中の脂質がLDLコレステロールを直接的に大きく上げるとは限りません。
ただし、すべての脂質が無関係というわけではありません。飽和脂肪酸(バター、ラード、牛脂、肉の脂身、生クリームなど)はLDLコレステロールを上昇させることがエビデンスで確立しています。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、飽和脂肪酸の摂取をエネルギー比7%未満に抑えることが推奨されています。一方、オリーブオイルや魚の油(不飽和脂肪酸)は動脈硬化に対して防御的に働くとされています。
まとめると、「油を一律に控える」のではなく、「飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を意識して摂る。そして何より、総カロリーを適正に保つ」が正しい食事の考え方です。
中性脂肪を上げるのは油より炭水化物
中性脂肪(TG)については、慢性的な上昇を引き起こす最大の要因は脂質ではなく炭水化物の過剰摂取です。ご飯の大盛り、パン、麺類、お菓子、清涼飲料水などの糖質が体内で中性脂肪に変換されます。加えて、過度の飲酒も肝臓での中性脂肪合成を促進します。「脂っこい物を控えているのに中性脂肪が下がらない」という方は、炭水化物の量と飲酒習慣を見直してみてください。
中性脂肪の原因と治療について詳しくは「中性脂肪が高い原因と下げる方法」をご覧ください。
極端な糖質制限ダイエットでLDLコレステロールが上がることがある
近年流行している糖質制限ダイエットですが、極端に炭水化物をゼロにする方法をとると、逆にLDLコレステロールが上昇するケースが報告されています。これは、身体が絶食状態と認識して肝臓でのコレステロール合成が亢進するためと考えられています。
中性脂肪を下げる目的で炭水化物を「適度に減らす」ことは有効ですが、完全にカットする極端な方法は逆効果になる可能性があります。大切なのは極端な方法に走らず、総カロリーを適正範囲に保つことです。
脂質異常症の改善に運動は必要か|効果と限界を正しく理解する
「コレステロールを下げるために運動しましょう」とよく言われますが、運動だけでLDLコレステロールを大きく下げることは実は難しいのが現実です。運動によるLDL-Cの低下幅は、メタ解析でも平均7 mg/dL程度と報告されており、食事管理や薬物療法と比べると効果は限定的です。
ただし、運動にはLDL低下以外にも重要な効果があります。HDLコレステロール(善玉)の上昇、中性脂肪の低下、インスリン抵抗性の改善、そして何より体重減少を助ける効果です。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、中等度強度の有酸素運動を1日30分以上、週150分以上行うことが推奨されています。
つまり、運動単独では脂質の劇的な改善は期待しにくいものの、食事によるカロリー管理と組み合わせることで、減量と脂質改善の効果を大きく高めることができます。「運動しているから食べても大丈夫」ではなく、「食事管理+運動」の組み合わせが最も効果的です。
食事量を減らすのが難しい方へ|医療ダイエットという選択肢
「カロリーを減らせば数値は下がる」と分かっていても、食事量を自力でコントロールすることは簡単ではありません。長年の食習慣を変えることは意志の力だけでは限界があり、治療がうまくいく方とそうでない方の差は、本人の「やる気」だけでなく、食欲のコントロールがどれだけできるかに大きく左右されます。
当院では、食事量の管理が難しい方に対して、GLP-1受容体作動薬などを用いた医療ダイエットにも対応しています。GLP-1受容体作動薬は、脳の食欲中枢に働きかけて食欲そのものを抑制する薬で、「我慢して食べない」のではなく「自然に食べる量が減る」ことで無理なく体重を落とすことが可能です。
体重が減れば、LDLコレステロールも中性脂肪も改善し、薬の量も減っていきます。脂質異常症の薬を増やし続けるよりも、根本原因であるカロリー過剰を医学的に解決するほうが、長期的には効率的なアプローチです。
脂質異常症の根本改善を目指す医療ダイエット
食欲を医学的にコントロールすることで、無理な我慢なく体重を減らし、脂質の数値改善と減薬につなげます。脂質異常症の治療と並行して取り組むことが可能です。
脂質異常症の食事・生活習慣に関するよくある質問(FAQ)
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