痛風・高尿酸血症と尿pH|なぜ毎回の尿検査が必要なのか【札幌 ゆうしん内科】

痛風・高尿酸血症の治療で「血清尿酸値」だけを追いかけていませんか? 実は、治療の安全性と効果を左右するもう一つの重要な数値が「尿pH」です。当院では、尿酸排泄促進薬(ユリス・ユリノーム)を服用中の患者さん全員に、毎回の受診で尿pH検査を実施しています。この記事では、その理由と尿pH管理の重要性について解説します。

尿pHとは|痛風・高尿酸血症の治療で重要な理由

尿pHとは、尿が酸性かアルカリ性かを示す数値です。尿酸は血中だけでなく、腎臓を通じて尿中にも排泄されますが、尿中での尿酸の溶けやすさ(溶解度)はpHによって大きく変わります。

尿pH尿酸の溶解度(目安)結石リスク
pH 5.0(酸性)約 15 mg/dL非常に高い
pH 6.0約 60 mg/dL低い
pH 7.0(中性)約 200 mg/dLほぼなし

pH 5.0とpH 7.0では、尿酸の溶解度に10倍以上の差があります。つまり、尿が酸性であるほど尿酸が溶けきれずに結晶化しやすくなるのです。

そして重要なのは、痛風・高尿酸血症の患者さんはそもそも酸性尿に傾きやすい体質を持っていることが多いという点です。肥満やインスリン抵抗性により腎臓でのアンモニウムイオン産生が低下し、尿pHが下がりやすい状態にあります。

尿pHが低い(酸性尿)と起こる痛風関連のリスク

尿pHが5.5以下の酸性尿が続くと、以下のリスクが高まります。

⚠ 酸性尿(pH 5.5以下)で高まるリスク

  • 尿酸結石の形成:痛風患者さんの尿路結石の有病率は一般の方の数倍と報告されており、主な原因が酸性尿です。
  • 尿酸腎症:尿細管内に尿酸結晶が沈着し、腎機能障害を引き起こすことがあります(micro-crystal nephropathy)。
  • 腎機能低下(クレアチニン上昇):特に尿酸排泄促進薬を服用中に尿pH管理が不十分だと、尿細管が障害されてクレアチニン値が実際に上昇する原因になります。

特に尿酸排泄促進薬(ユリス・ユリノーム)を服用している方は、尿中に排泄される尿酸量が増えるため、酸性尿の状態が続くと上記のリスクが一段と高まります。薬で血清尿酸値が下がっていても、腎臓側でトラブルが進行しているという状況が起こり得るのです。

尿pHが高すぎてもリスクがある|アルカリ尿の注意点

では尿をアルカリ性にすればよいかというと、そう単純ではありません。尿pHが7.5を超える過度のアルカリ尿になると、今度はリン酸カルシウム結石のリスクが高まります。尿酸結石を防ぐつもりが、別の種類の結石を作ってしまうという本末転倒な事態になりかねません。

尿pH管理の目標値

pH 6.0 〜 7.0

理想的にはpH 6.0〜6.5の範囲を安定的に維持

当院が尿酸排泄促進薬の服用中に毎回尿pHを検査する理由

多くのクリニックでは、痛風・高尿酸血症の定期フォローは血清尿酸値の確認が中心で、尿pHまで毎回チェックしているところはほとんどありません。当院では、ユリス(ドチヌラド)やユリノーム(ベンズブロマロン)を服用中の患者さんは全員、毎回の受診で尿pH検査を行っています。

毎回測定する理由

  • 排泄促進薬は尿中尿酸量を増やすため、尿pH低下→結石・腎障害のリスクが常にある
  • 食事内容や体重変化、季節(発汗量)などで尿pHは変動するため、一度の測定では不十分
  • 尿アルカリ化薬(ウラリット等)の用量調整に不可欠なデータとなる
  • クレアチニン上昇が「尿酸結晶による実害」か「一過性の変化」かを判断する材料になる
  • 追加コストや患者さんの負担がほとんどない(尿検査のついでに確認可能)

血清尿酸値だけでは「薬が効いているかどうか」しかわかりません。尿pHを同時にモニタリングすることで、「薬が安全に効いているかどうか」まで確認できるのです。

尿酸排泄促進薬と腎機能(クレアチニン)の関係

ユリスやユリノームを服用中にクレアチニン値がやや上昇することがあります。この原因としては、主に以下の二つが考えられます。

注意が必要な上昇

尿酸結晶による尿細管障害

酸性尿のまま排泄促進薬を使用すると、尿細管内で尿酸が結晶化し、腎臓に実際のダメージを与えます。尿pHが5.5以下で改善しない場合、クレアチニンの進行性上昇が見られることがあります。

過度な心配が不要な上昇

糸球体の過剰ろ過の是正

高尿酸血症では腎臓が無理をしてろ過量を維持していることがあり、尿酸が下がるとこの状態が正常化し、見かけ上クレアチニンがわずかに上がります。一時的で、腎保護的な変化です。

この二つを見分けるためにも、尿pHの定期的なモニタリングが不可欠です。尿pH管理ができている状態で、導入初期の軽度な上昇(0.1〜0.2程度)であれば経過観察が可能です。一方、尿pHが低いまま放置されているケースでは、積極的な介入が必要になります。

尿pHの改善方法|薬物療法と食事の両面からアプローチ

尿アルカリ化薬による治療

尿pHが低い場合、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤(ウラリット)が第一選択となります。クエン酸が体内で代謝されると重炭酸イオンが生じ、尿pHが上昇します。用量は尿pHの推移を見ながら調整します。

ウラリットで十分な効果が得られない場合には、炭酸水素ナトリウム(重曹)の併用を検討します。こちらも医薬品として尿酸排泄促進・痛風発作予防の適応があります。ただし、ナトリウム負荷が大きいため高血圧や心不全のリスクがある方には慎重に使用します。

食事による尿pH改善

食事の影響も大きく、薬物療法と組み合わせることでより効果的に尿pHを管理できます。

尿をアルカリ化する食品尿を酸性化する食品
野菜類(ほうれん草、キャベツ等)肉類全般
海藻類(わかめ、ひじき等)魚類
大豆製品(豆腐、納豆等)
果物穀類の過剰摂取
きのこ類アルコール(特にビール)

プリン体が多い食品と尿を酸性に傾ける食品はかなり重なっているため、プリン体を意識した食事改善は尿pH改善にもつながります。

十分な水分摂取

水分摂取は尿pHを直接大きく変えるものではありませんが、尿量を増やすことで尿中の尿酸濃度を下げ、結石リスクを軽減します。1日2リットル以上の尿量確保が推奨されます。なお、脱水状態や早朝の濃縮尿では尿pHが酸性寄りに出やすい傾向があるため、検査前の水分摂取も重要です。

尿酸値だけでなく尿pHも管理する痛風治療を

痛風・高尿酸血症の治療は「血清尿酸値を下げること」だけが目標ではありません。尿酸値を下げる過程で、腎臓に負担をかけていないかを同時に確認することが本来の内科的管理です。

当院では、初診時の尿検査で尿酸排泄率を測定し、タイプ分類(排泄低下型・産生過剰型・混合型)を行ったうえで薬剤を選択し、その後も毎回の尿pH検査で安全性を確認しながら治療を進めています。痛風・高尿酸血症の治療は当院の専門外来にご相談ください。

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