男性更年期障害とうつ病の違い|似ている症状の見分け方と治療のポイント

「やる気が出ない」「疲れやすい」「眠れない」「集中できない」——こうした症状に悩んで病院を受診したとき、男性更年期障害(LOH症候群)と診断されるか、うつ病と診断されるかは、実は最初にどの科を受診するかによって変わってしまうことがあります。

この記事では、臨床現場で悩むことの多い「LOH症候群とうつ病の関係」について整理します。

男性更年期障害とうつ病|なぜ間違えられるのか

LOH症候群の精神症状(意欲低下、集中力の低下、倦怠感、不眠、不安感)は、うつ病や適応障害の症状と驚くほど似ています。専門の医師でも、問診だけでは判別が難しいことがあります。

こうした背景から、LOH症候群の外来を受診した方の約40%が、すでに精神科や心療内科を受診した経験があるという報告があります。つまり、最初は「うつ病」として治療を受けていたが改善せず、テストステロンを調べてみたらLOH症候群だったというケースが非常に多いのです。

逆もあります。LOH症候群だと思って受診した方が、実はうつ病だったというケースです。どちらにしても、一方だけの視点で診断・治療を行うと見落とす可能性があるということです。

LOH症候群とうつ病の症状比較|見分けるポイント

両者を完全に切り分けることは臨床上難しいのですが、参考になるポイントがいくつかあります。

LOH症候群の傾向 うつ病の傾向
性機能 性欲低下+早朝勃起の消失が比較的早期から出やすい 性欲低下はあるが後期に出ることが多い
身体の変化 筋力低下、内臓脂肪の増加、ほてり・発汗 食欲変化(低下 or 過食)、頭重感
精神症状の質 「以前の自分と違う」という違和感、やる気の喪失 強い自責感、罪悪感、絶望感、自殺念慮
発症の経過 数ヶ月〜数年かけて徐々に 数週間で比較的急に
テストステロン値 低値 正常〜やや低下(うつ自体がテストステロンを下げることがある)
抗うつ薬の反応 効きにくい。副作用も出やすいとの報告あり 通常は反応する

注意:上記はあくまで「傾向」であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。特に早朝勃起(朝立ち)の有無は一つの手がかりになりますが、これだけで確定はできません。最終的にはテストステロンの血液検査が不可欠です。

男性更年期障害とうつ病は合併する

ここが臨床上もっとも悩ましい点です。LOH症候群とうつ病は「どちらか一方」ではなく、しばしば合併します。

テストステロンの低下がうつ症状を引き起こすこともあれば、慢性的なストレスやうつ状態がテストステロンの分泌を抑制することもあります。つまり、どちらが原因でどちらが結果かを明確に切り分けられない場合があるのです。

このとき問題になるのが、それぞれの治療が、もう一方の症状には十分に効かないということです。具体的に言えば:

抗うつ薬ではLOH症候群の身体症状(筋力低下・ED・ほてりなど)は改善しない
テストステロン補充ではうつ病そのものの精神症状(自責感・絶望感など)は改善しない

つまり、合併している場合は両方の治療を並行して行う必要があるということです。

抗うつ薬が効かないときはテストステロンを測ってみる

精神科・心療内科で治療を受けているが思うように改善しない、あるいは抗うつ薬の副作用(眠気、だるさ、吐き気など)が強くて続けられない——そんな方は、一度テストステロンの値を測ってみることをおすすめします。

臨床的な印象として、テストステロンが低い方は抗うつ薬の副作用が通常のうつ病患者よりも出やすい傾向があるとの報告もあります。もしテストステロンの低下が症状の主因であれば、テストステロン補充によって身体症状とあわせて意欲や活力が改善し、抗うつ薬の減量や中止が可能になるケースもあります。

逆に、LOH症候群の治療でテストステロンを補充しても精神症状が十分に改善しない場合は、うつ病の合併を疑って精神科との連携が必要です。

春と秋に患者が増える?|季節性の臨床的印象

当院の診療では、春先(3〜5月)と秋口(9〜11月)に男性更年期障害の相談が増える傾向があります。一方、真夏にはほとんど来院されません。

これにはいくつかの要因が考えられます。まず、うつ病にも季節性があり、いわゆる「五月病」的な春の不調や、日照時間が短くなる秋に気分が落ち込みやすくなる傾向は知られています。また、テストステロン自体にも日照量との相関を示す研究があり、夏に高く冬に低い傾向が報告されています。

春・秋はその境目にあたり、ホルモンの変動と社会的ストレスの変化(年度替わり、人事異動など)が重なることで、潜在的なLOH症候群やうつ症状が顕在化しやすいのかもしれません。

季節性についてはあくまで臨床的な印象であり、LOH症候群に限定した疫学データが十分に蓄積されているわけではありません。

精神科への相談は「チーム医療」の一部|男性更年期障害の総合的な治療

「精神科」「心療内科」と聞くと抵抗を感じる方は少なくありません。「自分はうつ病じゃない」という思いがある方にとっては、なおさらです。

しかし、LOH症候群とうつ病の境界は非常にあいまいであり、精神科への相談は「あなたはうつ病だ」という意味ではありません。テストステロンの治療を土台にしつつ、精神面の専門家のサポートも加えることで、より早く確実に回復できる可能性が高まるということです。

当院では、テストステロンの検査と補充療法を中心に診療を行いながら、精神症状の程度によっては精神科との並行受診をおすすめしています。「精神科に行く」のではなく、内科+精神科のチーム医療で回復に向かうという考え方です。

男性更年期障害かも?と思ったら|まずはテストステロンの血液検査を

「やる気が出ない」「疲れが取れない」「朝立ちがなくなった」——こうした症状が続いている方は、まずはテストステロンの血液検査を受けてみてください。検査は午前中の採血で簡単に行えます。

テストステロンが低ければLOH症候群としての治療が可能ですし、正常範囲であれば他の原因(うつ病、甲状腺疾患、睡眠障害など)の精査に切り替えることができます。いずれにしても、原因を調べるという一歩が、回復への最短ルートです。

ご予約・ご相談|ゆうしん内科クリニック

テストステロンの採血は午前中(11時まで)が推奨されます。

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