アナフィラキシーの新国際基準(2025年GA²LEN)
命を守るアドレナリンとエピペン・ネフィの備え
食物・薬・ハチ刺されによる重いアレルギー反応「アナフィラキシー」。2025年発表の新しい国際基準と、迷わず打つべきアドレナリン注射、点鼻タイプ「ネフィ」までを札幌市中央区のゆうしん内科クリニックが患者さん向けに解説します。
アナフィラキシーは、食べ物・薬・ハチ刺されなどがきっかけで急速に進行し、命に関わることもある重いアレルギー反応です。2025年に世界の専門家チーム(GA²LEN)が新しい国際的な判断基準を発表しました。本記事では患者さんとご家族に知っておいていただきたい見分け方、いざというときの対応、そして当院でのエピペン・ネフィ処方についてわかりやすく解説します。
アナフィラキシーとは ― 命に関わるアレルギー反応
アナフィラキシーは、原因となる物質(アレルゲン)に触れた直後から数十分以内に、皮膚・呼吸・循環・消化器など複数の臓器に強い症状が一気に現れるアレルギー反応です。放置すれば短時間で呼吸困難やショックに進行し、亡くなる危険もあります。
2022年の新型コロナワクチン集団接種会場でも、アドレナリン筋肉注射が間に合わずに亡くなられた事例が報じられました。アナフィラキシー死亡例のほとんどは「アドレナリン筋肉注射が遅れたこと」が原因とされており、いかに早く判断し、いかに早く打てるかが命を分けます。
主な症状 ― こんなサインに注意
皮膚・粘膜の症状
蕁麻疹(じんましん)、全身の赤み、まぶたや唇の腫れ、強いかゆみなど。ただし皮膚症状が出ないままいきなり呼吸や血圧に異常が出るタイプもあります。
呼吸器の症状
喉の詰まる感じ、声がれ、咳、ゼーゼーする呼吸、息苦しさ。これらが現れたら危険なサインです。
循環器の症状
めまい、立ちくらみ、顔面蒼白、冷や汗、意識がもうろうとする、失神など。血圧が急激に下がる「アナフィラキシーショック」の状態です。
消化器の症状
強い腹痛、繰り返す嘔吐、下痢など。食物アレルギーで特に多く見られます。
乳児で気をつけたいサイン
赤ちゃんは症状を訴えられません。声がかすれて泣く、唇を何度もなめる、急に機嫌が悪くなって泣き止まない、ぐったりするなどの普段と違う様子が手がかりになります。
2025年国際基準 ― アナフィラキシーの新しい見分け方
世界アレルギー・喘息研究ネットワーク(GA²LEN)が46人の専門家を集めて議論し、2025年1月に新しい判断基準を発表しました。これまで世界で2つの基準が並立していたものを、より実用的な形に整理したものです。ポイントは「原因となるアレルゲンに触れた可能性があるかどうか」で判断の仕方を分けたことです。
| 状況 | アナフィラキシーと判断する目安 |
|---|---|
| ①原因に心当たりがない場合 | 皮膚・粘膜症状に加えて、呼吸器または循環器の症状が必要 |
| ②アレルゲンに触れた可能性がある場合 | 皮膚・粘膜・呼吸器・循環器・消化器のうち2系統以上に症状 |
| ③明らかにアレルゲンに曝露した場合 | 呼吸器または循環器の症状が単独でも該当 |
大切なのは、アナフィラキシーには血液検査などの「決定的な検査」が存在しないということです。あくまで症状と状況からその場で判断し、迷う前に治療を始めることが命を守ります。
第一選択はアドレナリン筋肉注射 ― 迷わず太ももへ
新しい国際基準でも改めて強調されているのが「治療の第一選択はアドレナリンの筋肉注射」という点です。打つ場所は太ももの前外側(前ももの少し外より)。この場所はもっとも吸収が早く、衣服の上からでも打てます。
アドレナリンには血管を収縮させて血圧を上げ、気管支を広げ、アレルギー反応を起こす細胞からの物質放出を抑える働きがあります。早く打てば打つほど、その後の重症化を防ぐことができます。
⚠ ステロイドや抗ヒスタミン薬は「救命薬」ではありません
アナフィラキシーが起きたとき、まずステロイド点滴や抗ヒスタミン薬の注射を考える方も多いかもしれません。しかしこれらは効果が出るまでに時間がかかり、初期の救命効果は証明されていません。あくまで補助的な薬であり、アドレナリン注射の代わりにはなりません。アドレナリンを遅らせてはいけません。
エピペン・ネフィ ― 自分で打てる救命薬を備える
過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方、食物・ハチ毒・薬剤などで強いアレルギーをお持ちの方には、いざというときに自分や周囲の人が使えるアドレナリン自己注射薬の備えを強くお勧めします。
エピペン(注射タイプ)
太ももに当ててボタンを押すだけで自動的にアドレナリンが筋肉注射されます。日本で長年使用されており、学校・園・職場でも対応マニュアルが整備されています。
ネフィ(点鼻タイプ/2024年日本承認)
針を使わず、鼻にスプレーするだけでアドレナリンを投与できる新しい薬です。針が苦手な方、注射に抵抗があるお子さんやご家族にも使いやすく、選択肢が広がりました。
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いざというときの行動 ― 5つのステップ
1. 原因から離れる:食べ物なら口から出す、ハチがいる場所からは離れる。
2. 仰向けに寝かせ、足を高くする:心臓へ血液を戻しやすくします。呼吸が苦しければ上半身を少し起こします。妊婦さんは左側を下にします。
3. アドレナリン(エピペン・ネフィ)を使う:迷ったら打つ・使う。これが鉄則です。
4. 119番通報:必ず救急車を呼びます。アドレナリンが効いたように見えても、数時間後に再発(二相性反応)することがあるため必ず医療機関で経過観察が必要です。
5. 立ち上がらせない:急に立ち上がると血圧低下で心停止することがあります。救急隊到着まで横になったまま待ちます。
よくあるご質問(FAQ)
Q. エピペンを打って症状が治まったら救急車は呼ばなくてもいい?
A. 必ず呼んでください。アドレナリンの効果は10〜20分程度で、その後に症状がぶり返すことがあります。少なくとも数時間の経過観察が必要です。
Q. アナフィラキシーかどうか自信がないときも打っていい?
A. はい。「打って症状がなかった」よりも「打たずに手遅れ」のほうがはるかに危険です。迷ったら使うのが世界共通の推奨です。
Q. エピペンやネフィは誰でも処方してもらえますか?
A. 過去のアレルギー歴や生活環境を伺ったうえで、処方の必要性を判断します。当院では長年の経験をもとに、処方から使い方の指導まで丁寧に対応しています。
Q. 子どもにも処方できますか?
A. はい。エピペンには体重に応じた小児用(0.15mg)と成人用(0.30mg)があります。ネフィについても適応に応じてご相談ください。
参考:Greenhawt M, et al. GA²LEN consensus on anaphylaxis clinical criteria. J Allergy Clin Immunol. 2025年1月オンライン版

